月刊 Keidanren 2001年10月号 巻頭言

国家戦略に基づく科学技術政策への期待

庄山副議長 庄山悦彦
(しょうやま えつひこ)

経団連評議員会副議長・経団連産業技術委員会共同委員長
日立製作所社長

 科学技術の経済成長へのインパクトは、21世紀に入りグローバル経済が進展する中で、ますます大きくなっている。そのインパクトは、活発なベンチャー活動を通して新規産業を創出する一方で、価格メカニズムを通して旧来産業を淘汰する。しかも、国境を越えた産業の再編を加速しつつある。こうした環境の中で、どのような科学技術政策をとるかが、一国の経済の浮沈を左右するようになってきた。特に、財政の健全化を進めながら中長期的成長を維持していかなければならない日本経済にとっては、その必要性と期待は今まで以上に高まっている。

 年初に総合科学技術会議が内閣府に創設され、第二期科学技術基本計画が始まったが、その活動に注目が集まっている。何に重点化すべきかということについては、ライフサイエンス、IT、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野に決まった。次に、どのように強化策を推進していくかということについては、議論が始まったばかりだ。最大の課題は、国際競争力強化を目指した大学改革と、それを前提にした「産学官の連携強化」である。今までも「産学官の連携強化」は言われてきたものの、実効に乏しかった。この取組みがうまくいかなければ、国際競争力の強化は望めない。

 経団連の産業技術委員会では、さる8月に情報通信技術専門部会とともに、産学官連携推進部会を新たに立ち上げた。ここでは、基礎研究から実用化研究、そしてベンチャーの育成までを視野に入れた、産学官連携戦略を検討する。例えば、米国のように、企業が大学の研究者と一緒に、国立研究所で新しい施設や設備を活用し、実用化に向けた世界的研究をしていくような環境を早く作っていくことが重要だ。欧米諸国を見れば、国家戦略に基づく産学官連携による研究開発は、最大の科学技術戦略の一つになっている。総合科学技術会議には、国家戦略に基づく科学技術政策について、強力なリーダーシップを発揮することを期待する。


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