月刊 Keidanren 2001年12月号 巻頭言

流通問題と構造改革

平井委員長 平井克彦
(ひらい かつひこ)

経団連流通委員長
東レ社長

 本年5月より、新たに経団連の流通委員長に就任し活動を始めた。現在、わが国の流通分野を取り巻く環境は、革命とも呼びうる大きな変動期にある。国内消費は、成熟した経済構造と長引く景気低迷の中で、全体として不振であり、テロ問題もこれに追い討ちをかけてきている。消費の喚起は国内経済の最大課題の一つであろう。一方、国内消費の中でも選別化が進んで成長している分野もあり、大手流通外資の日本進出や、既存の商慣習に縛られない国内の起業家による新たなビジネスモデルの構築も進行している。こうしたビジネスモデルは、グローバルな商品企画・調達や効率的なロジスティックス、そして効果的な店頭マーケティングなど新たなシステムの上に成り立っており、IT革命の進行に併せて従来の流通形態や商慣行に大きな影響を与えつつある。

 言うまでもなく、国際的な産業競争が進行する中で、国内産業の構造調整は避けられるものではないが、前述した流通構造の変革は、ヒト、モノ、カネそして情報といった資源を効率的に活用するという産業構造改革が真に進行していることを裏付けるものであり、供給構造改革の要である人的資源の再配分についても新たな発展的均衡をもたらす可能性を秘めているのではないだろうか。

 その過程では、市場原理の下での各企業の競争と努力が基本となるべきことは言うまでもない。ただし、各産業レベルで、こうした改革の本質を吟味し共有することを通じて、産業全体としてのより効率的な調整を促進し、国全体の発展に貢献することは、産業人として重要な責務ではなかろうか。また同時に、この新たな均衡へのプロセスを、より円滑に適切な速度で進めることは、「国民の生活の安定」を最大の目標とする政治・行政の政策課題としても重要かつ望ましいことであろう。こうした視点で流通委員会の活動を進めたいと考えており、会員各位の積極的な理解と協力を期待している。


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