月刊・経済Trend 2007年8月号 巻頭言

日中交流は今がチャンス

御手洗会長 御手洗冨士夫
(みたらい ふじお)

2007「日中文化・スポーツ交流年」実行委員長
日本経団連会長

WTO加盟により開放度を一段と高めた中国は、4年連続の二桁成長を遂げている。その一方、昨年の貿易黒字額は1700億ドルを超え、また外貨準備高も今年3月には1兆2000億ドルに達した。

経済成長に伴い個人所得も増加している。中国の一人当たりGDPは5年間で倍増したが、その結果、中国の都市には8000万人もの中産層が出現し、さらに増大を続けている。

中国経済の変貌を受けて、中国の通商政策や外資利用政策も転換している。中国は産業の高付加価値化、サービス化へと経済政策の主軸を移し、従来の労働集約型、資源・エネルギー浪費型、環境汚染型産業から卒業しようとしている。

このように中国が発展する中、長らく途絶えていた日中間の首脳交流が実現したことは非常に意義深い。昨年10月の安倍総理の訪中により、日中関係の氷は砕かれ、今年四月の温家宝総理の訪日で日中関係の氷は溶かされた。

日中間の交流を強化するのは今が絶好のチャンスである。

首脳の相互訪問の実現により、両国政府間の協力と対話が本格化したが、その目玉は中国が直面する最大の課題といわれる環境問題である。環境・省エネ・省資源分野における政府間の協力や企業間のビジネスが今、非常に活性化している。

加えて、今年は日中国交正常化35周年にあたる。これを記念して、草の根レベルの相互理解増進に向けた「日中文化・スポーツ交流年」の交流行事を両国で開催している。イベントに参加している人々を見ていると日中関係が着実に改善していることが肌で感じられる。

日中両国の貿易額は2000億ドルを超え、日本企業の対中投資件数も累計で4万件近くに達する。今や中国抜きの日本経済は考えられないし、日本なくして中国の政府や市民にとって重要な環境・省エネ問題解決への展望は語れない。

本年を契機として、日中両国の間に多層的で柔軟かつゆるぎない関係をぜひ構築していきたいと考えている。


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