月刊・経済Trend 2009年12月号 巻頭言

環境と共生する豊かな都市を次世代へ

岩沙副会長 岩沙弘道
(いわさ ひろみち)

日本経団連副会長
三井不動産社長

COP15の開催を目前に控え、地球温暖化問題に関する議論が高まっている。課題となっている民生部門でのCO2削減には、人々が生活する都市全体を低炭素型の構造に転換していくことが重要である。そのためには、コンパクトで効率的な集約型の都市構造を目指すと同時に、わが国の強みでもある最先端の環境技術を積極的に都市に組み込んでいく必要がある。例えば、注目される太陽光パネルやスマート・グリッドなども、エコ住宅や、電力網などの都市インフラに組み込まれて効果を発揮するものと言える。まさに都市政策と先端技術の融合こそが課題解決の大きな鍵を握っている。

また、都市を環境との共生という面からとらえれば、低炭素型構造への転換だけでなく、自然との調和という視点も欠かせない。人々の環境共生への関心の高まりを広くとらえて、新たな付加価値創造につなげていく取り組みが大切である。水辺や緑を活かした都市景観は、都市のアメニティーとして人々に癒しを与え、働く人の生産性の向上をサポートしてくれるとともに、都市の再生や観光の発展にも重要な要素となる。わが国でも、日本橋川を覆う首都高速の撤去が議論されているが、韓国のソウルでは、高速道路を撤去してかつて流れていた川を復元したことにより、市民の憩いの場を生み出した。潤いのある都市景観は新たな観光名所にもなっている。

都市間の競争も激しくなるなか、今後の都市は、誰もが誇りと愛着を持ち、安心して住み続けたい、働きたい、また世界中の人々が訪れたいと思うような、魅力と活力にあふれた都市を目指さなければならない。それには、日常生活や経済活動を支える基盤が整っているのみならず、各都市が持つ歴史や伝統、自然、そこに住む人々の文化や生活などを活かしながら、環境と共生する持続可能で豊かな都市へと進化させることが不可欠である。そのような都市を次世代へ継承していくことがわれわれの重大な責務である。


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