月刊・経済Trend 2011年3月号 巻頭言

規制・制度改革の実現に向けて

岡副議長 岡 素之
(おか もとゆき)

日本経団連評議員会副議長
住友商事会長

民間の代表として、内閣府の行政刷新会議に設置された「規制・制度改革に関する分科会」の分科会長代理を拝命した。国民の安心・安全や公正な競争を確保し、豊かな国民生活を実現していくうえで、規制・制度は重要な政策手段であり、それぞれの時代背景や必要性に応じて実施されてきたものである。しかしながら、その後の環境変化にもかかわらず、そのまま放置されてきた結果、逆に社会に弊害を及ぼす事例も少なからず出てきた。手詰まり感のある日本の現状を打破するためにも、こうした時代・環境の変化に合わせて既存の規制・制度を見直し、国民や企業が創意工夫を発揮しやすい環境を整えていくのが規制・制度改革の趣旨である。

これまで長年にわたる取り組みがなされてきたにもかかわらず、思うような成果をあげられていないという意見もあるが、現政権においては、政治のリーダーシップのもとで外国人在留資格認定の迅速化や、太陽光発電設備に関連しての工場立地法改正などの成果もみられる。今後は分科会で決定し、現在各府省と事務協議・政務協議中である約250の規制・制度改革項目につき、しっかりとフォローアップし、スピード感を持って確実に実施されるよう、分科会のサポート機能を発揮していきたい。

規制・制度改革の実現性を高めるには、諸規制・制度を所管し、どこをどう変えればよいかを一番よく理解している府省の主体的な取り組みが効果的かつ不可欠である。日本最強のシンクタンクである官僚システムを最大限に活用し、行政組織自らが規制・制度を改革していくことが国民生活の豊かさと日本の成長発展に資すると認識し、その実現に使命感と達成感を感じられるような土壌づくりが重要だ。

しかし、官僚が設計図を準備したとしても、それを実現するためには、政治のリーダーシップが欠かせない。総理を中心に内閣が一致結束し、政治主導で改革の優先順位を決め、関係府省も自ら果たすべき役割と責任を自覚し、日本全体の利益を考えて政官が緊密に連携することを期待したい。


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