経済くりっぷ No.1 (2002年7月9日)

5月20日/社会貢献担当者懇談会 −社会基盤整備(座長 瀬尾隆史氏)

新たな経済主体としてのNPO

−「産構審NPO部会中間取りまとめ『新しい公益』の実現に向けて」について


NPOに対する関心が高まっている。経済産業省の産業構造審議会(以下、産構審)NPO部会においても、NPOを「新たな経済主体」と位置づけ、その経済効果や発展のための課題や必要な方策に関する「中間取りまとめ」を公表した。そこで、従来からNPOの基盤強化を支援し、NPOとの協働で社会貢献活動を推進してきた当懇談会では、経済産業省大臣官房政策企画室 浜辺哲也調査官らから説明をきき、今後の課題について懇談した。

  1. NPO部会における審議
  2. 2001年8月末の産構審の総会で、NPO部会の設置が承認され、9月から8回検討を行ってきた。委員は、大阪大学大学院の本間正明教授を部会長に、NPO、自治体、企業、学者など21名。取りまとめでは、新しいタイプのNPO(特定非営利活動法人+任意団体の87,928件)を対象に、経済社会への波及効果を分析している。その上で、寄付金税制の整備、企業とNPOのパートナーシップの拡充、企業や行政からNPOへの人材シフトの促進、NPOの活動評価など、発展拡大のための課題と促進策を検討した。

  3. 経済産業政策とNPO
  4. 経産省としては、今後、以下のような観点からNPOを捉え、経済産業政策上で位置づけていく。

    1. 経済主体としてのNPO
    2. (1) 生活密着型サービス産業の担い手
      NPOが提供するサービスは、需要者と供給者が近接し双方に信頼関係が存在する、地域に密着している等、従来の企業にはない特性を有し、医療福祉、教育等の生活密着型サービスの分野で企業と並ぶ供給者となる。

      (2) 地域経済を活性化する主体
      NPOを形成するのは共通の価値観、問題意識を有する地域住民であることから、行政や企業が対応できなかった部分で地域経済を活性化する。

      (3) 小規模事業者との相互作用
      NPOは、ベンチャー企業、中小企業、SOHO等の小規模事業者と事業形態、経営課題で共通する点が多い。あまり厳格に区別せずに政策を考えていく方向に動いている。

    3. 政策提案者および政策推進主体としてのNPO
    4. 経産省の政策分野において、需要者側の視点を政策の企画立案や実施過程に活かす必要のある分野は、
      1. 地域における先駆的な社会サービスの提供(コミュニティビジネス)、
      2. まちづくり、
      3. 起業促進、
      4. 循環型経済社会の構築、
      5. 省エネルギー・新エネルギーの導入、
      などがあり、NPOとの連携が重要になってくる。

  5. 「産業連関表によるNPOの経済効果の分析について
  6. NPOの現在の規模や取引関係、将来の経済効果を、各産業と比較・検討するため、産業連関表のフレームワークを使用して推計した。

    1. NPOの経済規模
    2. NPOの国内生産額は、6,941億円(2000年時点)であり、全産業の総生産額の0.08%と推計された。他産業と比較すると、パルプ、二輪自動車、保健等と同規模である。また、6,941億円のうち、無償の財・サービス・労働を推計したところ、4,325億円となり、6割以上を占めた。

    3. NPOの投入・産出構造
    4. 全産業平均と比較すると、NPOでは賃金・俸給の割合が高く、労働集約的である。投入される中間財については「不動産・賃貸」および「ソフト(情報伝達・知識流通)」に関係するものが多く、サービス産業型に近い。
      NPOの生産物の産出先を産業部門別に見ると、公共・民間サービス部門への産出割合が高い。将来的に医療や学校教育が成長すれば、それに応じてNPOが拡大していくと予想される。

    5. 需要拡大から予測したNPOの生産規模
    6. 4つの前提で2010年のNPOの姿を予測した。たとえば、構造改革が進み、2004年度以降、民間需要主導による実質1.5%以上の着実な成長が実現し、環境、福祉、情報などの成長分野において大きな需要創出が見込まれる場合、NPOの国内生産額は1兆7,844億円と2.6倍になり、GDPの0.16%を占めるようになる。同様の前提で、雇用の面では、新たに約24.2万人(合計で約41.8万人)の労働需要の創出が見込まれる。
      NPOの雇用者に占めるパートタイム労働者(非常勤)の割合を見ると、54.9%であり、全産業平均の14.5%に比較すると極めて高い。NPOがワークシェアリング型の就業形態を有していることが数値からも推測できる。将来ワークシェアリングが進展した場合、時間的にフレキシブルで、さらに自己実現を満たす働き方を求める労働者にとっては、NPOが就業の場の一つとして期待される可能性がある。

  7. 今後の予定
  8. NPO部会では、今後、寄付金税制、社会起業家などをテーマに検討を進めていきたい。また、経済産業ジャーナル7月号にNPO部会の特集を予定している。


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