経済くりっぷ No.14 (2003年2月11日)

1月27日/輸送委員会企画部会(部会長 横山善太氏)

わが国港湾の国際競争力強化と港湾運送事業の規制緩和


国内の主要9港においては2000年11月より港湾運送事業法の一部を改正する法律が施行されている。これにより、需給調整規制を撤廃し、事業免許制が許可制へ、また料金認可制が事前届出制へと規制緩和された。一方、主要9港以外の地方港については、「規制改革推進三か年計画(改定)」(2002年3月)において、2002年度に検討を開始し、2003年度中に結論を得るべき旨閣議決定された。国土交通省では、地方港における規制緩和のあり方について、船社や荷主などユーザーの意見も踏まえ検討を進める意向を示していることから、産業界としても、物流効率化に資する提案を行っていくことが重要である。そこで国土交通省海事局の長田太港運課長を招き、「わが国港湾の国際競争力強化と港湾運送事業の規制緩和」につき説明をきくとともに、意見交換を行った。

I.長田課長説明要旨

1.アジアにおける日本港湾の地位低下

中国をはじめアジア諸国の急激な経済発展により、日本・アジア間の経済格差は縮まっている。わが国の輸出入に占める海上貿易シェア(重量ベース)は99.7%であり、港に依存するわが国の実態が表れている。
世界の海上コンテナ輸送に係る荷動きでは、アジアの経済成長を反映し、欧州・北米とも、アジアとの間の荷動き量が増加している。また、1990年代半ば以降、中国に生産拠点を移す日本企業の増加などによって、上海などアジア主要港のコンテナ取扱量が劇的に増加している。1980年にはコンテナ取扱量世界第4位であった神戸港は現在25位にまで落ち込んでいる。対照的に、上位5港は、

  1. 香港、
  2. シンガポール、
  3. 釜山、
  4. 高雄、
  5. 上海、
の近隣アジア港に独占されており、日本の最高は東京港の18位に過ぎない。中国のコンテナ取扱量は1999年時点で既に日本を上回る約1,200万TEU(20フィートコンテナ個数)に達し、今後2011年には約4,600万TEUにまで急増し、アジア最大の取扱量になると考えられている。
こうした状況下、わが国港湾の基幹航路寄港便数が減少する、いわゆる抜港が顕在化している。1999年にアジアでの寄港回数1位を誇った日本は、わずか2年間で中国に追い抜かれた。この最大の原因として、アジア諸港で中継貨物量が概ね30〜50%以上であるのに対して、日本ではわずか4%に過ぎないことが挙げられる。このままでは、日本の港湾は韓国やシンガポールの主要航路を補完する周辺的な役割しか担えなくなることが懸念され、物流コストの上昇や製品の国際競争力の低下を招きかねない。

2.スーパー中枢港湾の狙いと施策

こうした折り、国土交通省では海事局と港湾局が一体となってスーパー中枢港湾の選定に取り組んでいる。スーパー中枢港湾の目標は、アジア主要港湾を凌ぐ港湾コストとリードタイム(時間コスト)を実現することである。港湾コストを釜山・高雄並みに約3割低減する一方、リードタイムは現状3〜4日をシンガポール並みの1日程度まで短縮したい。また、目標達成に向け、他港に先駆けて実験的・先導的な施策を展開し、日本のコンテナ港全体のサービス水準底上げにつなげたい。
コスト競争力についてみると、日本の港湾諸料金水準を100としたとき、高雄 65、釜山 64であり、隔たりは大きい。しかし、国土交通省では、よりコスト・パフォーマンスの高い港湾を目指すため、港湾料金低減のための施策に取り組んでいる。たとえば、コンテナターミナル整備において、岸壁等を公共事業で整備し、上物施設は埠頭公社事業で行う方式を2002年1月より3年3ヵ月の時限措置として導入したが、これによって約2割のリース料低減効果が見込まれている。

3.港湾運送事業の構造改革

全国の港湾運送事業者は約1,000社であるが、中小企業の割合が9割を超えている。事業規模の零細性や需給調整規制の存在によって、港運事業においては、長らく新規参入の抑制や料金設定の硬直性により競争が働かない高コスト構造が温存されてきた。しかし、2000年5月に港湾運送事業法の改正によって、主要9港について需給調整規制の廃止、料金の原則自由化が認められ、新規参入ユーザー(船主・荷主)のニーズに応じた料金やサービスの提供が促進された。さらに、主要9港以外の地方港85港の規制緩和については、規制改革推進三か年計画(2002年3月閣議決定)において、2002年度より検討を開始し、2003年度中に結論を得ることとされている。荷主や船主など関係者の意見を十分に聴取しながら、地方港の規制緩和に取り組みたい。

4.港湾荷役のフルオープン化

2001年11月の港運労使間合意によって、元旦を除く364日、荷役作業を24時間行うことが可能となった。これは大きな前進であり、ゲート作業のフルオープン化に向け、2002年10月より、横浜港においてゲートオープン時間を延長する実証実験を行っている。具体的には、荷主・トラック事業者が24時間いつでもコンテナ貨物の搬出入を行えるよう、コンテナターミナルに近接した場所に24時間利用可能なストックヤード(コンテナ貨物の仮置き場)を設置し、インターネットを利用してストックヤードからの搬出入時刻を予め予約する仕組みである。このように、ストックヤードの搬出入に対する需要に的確に応えることで、ストックヤードに滞留する貨物を減らし、港湾物流の効率化につなげていきたい。

II.質疑応答(要旨)

日本経団連側:
日本でのフルオープン化は物流効率化につながると考えられるが、欧州の港湾における実態はどうか。
長田課長:
欧州の港湾は土日休みのところも多く、必ずしもフルオープンではない。一方、香港や釜山などアジアの港湾においては、港運事業者3交代制のもと24時間稼動している。

日本経団連側:
港湾利用コスト低減のためには、バース(岸壁)の有効活用が重要である。現状では、夜入港すると割増料金を取られるが、夜間入港に対する割安料金を設定できれば、1バース当たりの処理量が向上し、コストダウンにもつながるであろう。
《担当:産業本部》

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