経済くりっぷ No.16 (2003年3月11日)

2月6日/第3回起業フォーラム(代表世話人 高原慶一朗氏)

大企業とベンチャー企業との連携を模索


日本経団連会員企業とベンチャー企業との連携を具体的な形で推進すべく、第3回起業フォーラムを開催し約170名の参加を得た。高原代表世話人(日本経団連新産業・新事業委員長)の挨拶に続いて、日本経団連会員企業による新規事業への取組み、ベンチャー企業8社の事業内容につき、それぞれ説明をきいた。

I.高原代表世話人挨拶

日本経済の活性化のためには、

  1. IT、バイオ、ナノテク等の先端技術による新市場開拓、
  2. 健康、観光、食・住といった生活創造サービス市場開拓、
  3. 20億を超える人口を擁する東アジア市場への働きかけ、
などが必要である。
そうしたことを実現するためには、大企業が持っている経営資源と、ベンチャー企業の感性・意欲を組み合わせた21世紀型ビジネスモデルの構築が必要である。今後も本フォーラムを継続的に開催するので、是非、この場を活用してほしい。

II.会員企業の新規事業紹介

1.以頭博之 日立製作所CVC室部長

日立CVCファンド(コーポレート・ベンチャー・キャピタルファンド)は、2000年7月に100億円の予算で設立した。その目的は、

  1. 事業連携とキャピタルゲインの双方を目指したベンチャー企業への投資、
  2. 新技術・新事業機会の探索、
などである。ベンチャー企業への投資の場合、社内各事業部との連携を心掛けている。新技術・新事業機会の探索においては、CVC室が、ベンチャー企業からは当社の窓口として、社内からはベンチャー企業へのアクセスポイントとして、機能している。ベンチャー企業との間で実際に出資・連携に至った事例をみると、CVC室、事業部、ベンチャー企業が長期的な観点から、ビジョン・戦略を共有できることが前提となっている。
今後、ベンチャーコミュニティとのネットワーク強化、事業部との情報・戦略の共有、研究開発部門との連携、社内に埋もれているコア技術予備軍の有効活用等によって、新事業を開拓していきたい。

2.森本厚彦 旭化成ネットビジネス推進部部長

従来、旭化成では技術やシーズから事業展開するという発想であったが、住宅事業を手掛けたことにより、生活者のニーズを把握し、ニーズを活用した事業展開をするという発想が生まれた。
ネットビジネス推進部では、現在持っている経営資源とITを活用した生活支援産業を手掛けている。具体的には、当社が経営参画している延岡のCATVを活用して実験し発展させた、コミュニティー支援システム、在宅健康管理システム等を展開している。地方自治体、NPOの協力を得ながら展開する地域支援活動の中に商機がある。多様化する顧客のニーズに対応するには、各分野の専門家によるリアルな情報、サービスを提供することが必要である。

III.ベンチャー企業の事業内容紹介

2つの分科会に分かれてベンチャー企業8社の事業内容の紹介、質疑応答を行った。懇親会では、日本経団連会員企業とベンチャー企業が、活発な情報交換を行った。

1.第1分科会(司会進行:鳴戸道郎 新産業・新事業委員会企画部会長)

(1) ラティス・テクノロジー(Web3Dソリューション)
当社のXVLという三次元データを軽量化する技術によって三次元データの交換・共有化が容易になり、業務プロセスの変革や全体最適にとどまらず、企業の合併、協業の支援等について活用できる。

(2) ユーケーテック(形状計測・再成形機の製造)
プレス加工法の不良は必然的に発生するという新しい発想から生まれた当社のシステムは、コスト、品質、環境面等で次世代プレス加工環境を提供する。

(3) ネクスターム(Thin Client によるソリューション)
ネットワークにつながったサーバで、ユーザーが使うアプリケーションやデータを管理するため、高信頼性、高セキュリティ、総所要コストの削減、インストールの容易性が可能となる。

(4) ナノテック(DLCコーティング装置・評価試験装置の製造販売、受託コーティング加工)
各種材料に薄膜(DLC=ダイヤモンドライクカーボン:炭素系被膜)を形成することにより、高機能化が実現する。ナノ単位での薄膜評価試験装置にも取り組んでいる。

会場からは、売上予測、他分野への事業拡張の可能性、特許取得の有無等について質問が出された。

2.第2分科会(司会進行:熊谷巧 起業フォーラム世話人)

(1) ナノキャリア(医療関連物質の研究・開発・製造)
ドラックデリバリーシステムには、薬物の可溶化、徐放化、ターゲティングといったメリットがあり、医薬品を患者に簡便に投与できる。

(2) e-アグリ(農産物流通における電子商取引)
ITを活用して農産物生産者と小売スーパーとを結ぶ電子商取引市場を構築し、産地提案型の産直取引を実現することによって、日本農業の活性化が可能となる。

(3) イデアインターナショナル(ライフスタイル雑貨の企画・販売)
ライフスタイル商品開発では、コンセプト、デザイン、販売チャネル等が重要である。企業へのサポートも行っている。

(4) シニアコミュニケーション(シニア市場専門コンサルティング)
シニアの生の声をしっかりと捉え、シニアマーケットへの展開を企図する企業へのトータルソリューションを提供している。

会場からは、売上予測、顧客ニーズの把握方法、収益獲得モデル、リスクマネジメント等について質問が出された。

《担当:産業本部》

くりっぷ No.16 目次日本語のホームページ