これまでの日本は、欧米の技術水準にキャッチアップすることに官民が総力をあげて取り組み、国内で生産した製品を国内市場のみならず海外に輸出するという「MADE“IN”JAPAN」の戦略で経済大国の地位を築いてきました。しかし、21世紀において日本は、世界のフロントランナーとして、未知の世界を切り拓いていくことが求められます。そこで、新ビジョンでは、日本がその潜在的な成長力を十二分に発揮できるようにするため、「MADE“BY”JAPAN」戦略の推進を訴えています。
今日、いわゆる「勝ち組」といわれている企業は、ほとんどが多国籍企業であり、そうした企業の市場は全世界です。したがって、国の経済も国境を越え、連結経営的に捉えていくという考え方が必要になってきます。具体的にいえば、日本企業の対外直接投資から生じる収益、特許料などの技術料収入を日本国内の経済活動の環(わ)の中に戻し、先進的な技術革新に結びつけていくということです。新ビジョンではこれを、「MADE“BY”JAPAN」戦略と呼んでいますが、日本が世界の力を最大限活用し、科学技術創造立国として、また世界のフロントランナーとして、新技術や新製品を開発し世界に発信していく戦略です。
新技術をいち早く産業化するための環境整備として、新ビジョンでは、法人税率の大幅な引下げを提言しています。日本の実効税率は、下の図の通り、依然としてOECD加盟国中最高水準です。グローバル化が進行する中で、シンガポールやオーストラリアをはじめとする多くの国々が、自国産業の競争力を高め、外国からの直接投資を呼び込むために、法人税負担の軽減を進めています。本来、法人が上げた利益は、配当や持分の払戻を通じて、最終的には株主に帰属するものです。そのため、納税者番号制度を導入して所得捕捉を徹底すれば、所得税の前払いとしての法人税は二重課税になるとの議論もあります。税体系の抜本的見直しの一環として、法人税の実効税率を思い切って大幅に引き下げていくことが重要です。