成長センターである東アジアでは、域内の分業体制が高度化するなど、事実上の経済統合が進みつつあります。その中で東アジアの国々の関係をさらに深め、ひとつのまとまった地域としてグローバル競争に打ち勝っていくためには、制度的な枠組みづくりが求められますが、現実にはそれが大きく遅れています。
日本がバブルに踊っていた1980年代の後半、EC(現在のEU)はすでに関税同盟を完成させていました。その後、統合の準備を着々とすすめ、1992年末には市場統合を、1999年には通貨統合を実現させ、経済面では国境のない「ひとつの欧州」が完成しつつあります。アメリカでも、隣国カナダとの「米加自由貿易協定」(1989年)に引き続き、NAFTAを発効させています(1994年)。
こうした制度的な枠組みを東アジアでつくり上げるためには、最も経済力のある日本が強いイニシアティブを発揮していくことが必要です。自らの手で「第三の開国」を進めながら、東アジアに多様性のダイナミズムを引き出すのです。グローバル競争の時代にあっては、一国の努力には限界があります。東アジアにいま求められているのは、地域としての自律力を強化し、外的ショックに強いアジアをつくるとともに、東アジアを強力なハブにしていくという戦略です。
東アジア自由経済圏の構想推進に当たっては、モノ、サービス、ヒト、カネ(資本)の域内での自由な移動に加え、情報の移動・流通を自由化することが求められます。次回は、それらの具体的な姿を示すことにします。