「真に重要なのは提案自体ではなく、その実現である」。このような考えの下、新ビジョン第4章では、改革実現のための日本経団連のアクションが示されています。その代表は、現在検討が進められている政治寄付のガイドラインですが、もう一つ、政治のリーダーシップを高めるための行動が示されています。それが政策起業家育成構想の推進です。
総理大臣といえども、たった一人で改革を実現することはできません。また、政治がいかに改革を進めようとしても、官僚の抵抗で骨抜きになるといった事態はこれまでさまざまな場面で見られました。政策起業家育成構想とは、省益にとらわれず政治、特に総理の信念を具現化し得る人材を増やし、彼らが閣僚や政府高官の政治任用者として活躍できるようにしようというものです。言い換えれば、「回転ドア」を通じて、政策起業家がいつでも政権に加われる状況をつくっておこうという提案です。
米国では、大統領が変わるたびに数千人の規模で政府高官が入れ替わりますが、日本では政権が継続性を重視する官僚機構に依存するため、改革が進みにくいのです。政策起業家が活躍できるようにするためには、政府高官の流動性を大幅に高める必要があります。同時に政権を離れた人材が、「実戦」に備え技術を磨いていける「基地」を民間の領域に建設しなければなりません。官と民の間にあるのが「回転ドア」であり、その両側には、政策起業家が公共政策を企画し改革を実現させることでキャリア・アップできるインセンティブが求められます。
このような政策決定システムの確立は決して容易なことではありません。しかし、歴史的改革が求められている今こそ、政治のリーダーシップを支えるために、より多くの政策起業家が生まれ活躍することが必要です。政策で日本を変えるために進んでリスクを取ろうとする個人の挑戦をいかに支援するか、日本経団連はこの課題にも真剣に取り組んでいきたいと考えています。
10回にわたり、日本経団連の新ビジョンのポイントを紹介してまいりました。
2025年、日本が「活力と魅力溢れる経済社会」を築いているために必要なのは、国民や企業が目標に向かって力強く進んでいくことです。新ビジョンはその羅針盤としての役割を果たしていけるものと思っています。
まだお読みでない方には、是非ご一読をお願いいたします。
ビジョン概要: | http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/vision2025.html |
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