7月22日/意見書
日本経団連は、7月22日、提言「災害に強い社会の構築に向けて」を取りまとめ公表した。大震災などの災害を最小限に抑えるために、企業、行政、NPOなどの連携の重要性を指摘するとともに、企業防災のあり方として、経営トップが率先して防災対策に取り組むべきことを強調した。提言にあわせ、対策組織のあり方、被害軽減策、安否確認の方法、先進的企業の取り組み事例などを盛り込んだ「企業の地震対策の手引き」「地震をはじめとする危機管理の社内マニュアル(危機管理計画書)のサンプル」をまとめた。
今世紀前半にも、日本経済の中軸をなす地域で大規模地震が発生する可能性がある。
地震に強い国づくりは、わが国の最重要課題の一つである。
自然災害の克服は、新ビジョンで描く魅力ある国づくりの基盤である。
防災の面で、企業、行政、NPOなど各主体間の有機的連携が欠如している。
各主体の問題
企業: | 事業規模や業種間で対策に格差がある。社内対策に加え地域の防災力強化に向けた協力が必要である。 |
行政: | 防災関係機関を一元的に指揮できる体制にない。国・都道府県・市町村の連携が機能するか疑問が残る。行政の出す防災情報が国民に十分届いていない。 |
NPO: | 地縁組織(地域町内会など)や自治体との連携が不足している。専門性の向上、人材・資金面の基盤強化などの課題を抱える。 |
個人: | 防災意識が低下している。 |
企業内の防災対策のみならず地域防災力の強化に協力することが必要である。
社内における取り組み
社会への貢献
企業間あるいは自治体、地縁組織との連携による地域防災力の強化が重要である。
企業は、その人材や物的資源を活かし、地域の防災力強化のために貢献できる範囲で積極的に取り組む。
一元的な防災体制の確立と縦割り主義の排除
広域的な支援を迅速に行うための仕組みや支援内容を定める。内閣府の機能を強化し、防災全般に通じた専門家を養成する。
きめ細かい情報の提供と情報認知度の向上
地域の防災力の強化
規制改革など
高性能で効率的な消火技術の積極導入、救命措置にかかわる規制緩和、災害救援を行う際の規制の特例措置、災害救援活動を円滑に行うための運用のあり方の検討(港での緊急運搬やヘリコプターの管制など)。
防災教育の充実
学校教育に一貫して防災教育・防災学習を取り入れる。地震の備えに関する教本を作成し国民に配布する。
NPOの役割を積極的に評価するとともに、NPOの多様な活動をつなぐ機能を強化する。
企業とNPOとの日頃の連携が災害時にも活きる。
企業は、立地地域の防災関連ネットワークに日頃から参画する。
経済団体は、災害発生時に、被災地から発信されたニーズや情報を会員企業などに伝達し、支援を呼びかける。
日本経団連は、平常時および災害発生時にブロック別の経済団体や各地の経営者協会と連携する。また、会員企業の先進的な取り組み事例の紹介、シンポジウムの開催などにより防災啓発活動を推進する。
災害に強い社会を構築するためには、行政、地縁組織、企業、NPOなどの連携が不可欠である。
日頃より、各主体間で、情報の共有と役割分担、協働のルールづくり、連絡や調整の方法などを協議する場が必要である。