経済くりっぷ No.26 (2003年8月12日)

7月23日/産業技術委員会国際標準化戦略部会(部会長 尾形仁士氏)

国際電気標準会議(IEC)に参画して

−高柳IEC会長よりきく


知的財産を核にしたわが国の製品やサービスが、グローバル市場において産業競争力を確保するためには、国際標準化が重要な要素となっている。欧米諸国では、官民一体となって国際標準化活動が戦略的に推進されているが、わが国の官民における取り組みは欧米に比べて十分とは言えない。このような問題意識のもと、産業技術委員会では、産業競争力の強化のため、技術戦略、知的財産戦略と国際標準化戦略とを一体的に推進する観点から、わが国の国際標準化戦略のあり方について検討を行う場として、国際標準化戦略部会を設置するとともに、第1回会合として、国際電気標準会議(IEC)の高柳誠一会長より、わが国の国際標準化の強化について説明をきき、意見交換を行った。

I.高柳会長説明要旨

国際標準化の戦場では、良い技術、立派な理論だけでは勝てない。個人間ならびに家族を含めた信頼関係を醸成し、多くの味方をつくることが鍵である。資金拠出は必要であるが、それだけでは尊敬されず、ボランタリーな関与が不可欠であり、時間をかけた能動的な提案と行動が国際的な評価につながる。IECなどにおける専門委員会の幹事国引き受けは「汗」の象徴である。
欧米企業では、経営者が「標準はビジネス」と認識しているので、独立した標準部を設置し、全社的な標準化戦略および効率化を専任スタッフが推進している。これに技術開発や設計部門の技術者が参加し、1社で2,000人が標準化活動に関係している会社もある。
わが国企業では、国内標準化に向けた活動が重視されてきたが、今後は製品開発の動向などをにらみつつ、国内標準化活動と国際標準化活動の連動を強めていくべきである。国際標準化の戦場に対応するために、社内で企業経営層および中間管理層に標準化に対する理解を広めなければならない。
また、わが国では、標準が競争力に与えるインパクトについての研究も遅れている。国際標準の経済効果、国際標準と特許権の関係、公的標準とフォーラム標準などに関する実証的な研究が待たれる。
国際標準化活動は単独では成立しない。研究開発、生産技術、特許権、国際標準の四位一体で、国家および企業の研究開発戦略を改革していくべきである。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
IECはデファクト標準(事実上の標準)については、どのような役割を果たしているか。

高柳会長:
フォーラム(注)から技術スペック(仕様)の作成について申し出があった場合、Executive Committeeで受け取るが、中身はフォーラムで検討される。そのスペックが実際に使用されていることが証明されれば、優先的にデジュール標準(公的標準)にする制度を設けている。

(注) フォーラム:迅速かつ柔軟な標準化に向けて民間が主体的に取り組むための企業連合体。
《担当:環境・技術本部》

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