9月26日/金融制度委員会(委員長 勝俣恒久氏、共同委員長 西川善文氏)
Introduction
わが国の金融システムに対する内外の信頼を回復し、経済再生を軌道に乗せるため、不良債権問題を着実に終結させるとともに、構造改革の加速、新たなイノベーションを支える新しい金融システムの整備が課題となっている。金融庁においては、これまで、昨年10月の「金融再生プログラム」、および、同年8月の「証券市場の改革促進プログラム」に沿って各種取り組みが進められてきた。金融制度委員会では、金融庁の増井喜一郎総務企画局長より、金融行政の当面する課題について、説明をきいた。
景気の現状は、企業部門の設備投資の増加、収益の改善など、持ち直しに向けた動きがみられる。株価も本年5月以降回復した。これまでの金融行政の取り組みの成果が現れているのではないか。引き続き、「金融再生プログラム」および「証券市場の改革促進プログラム」に盛り込まれた諸施策を中心に、金融システムの安定化、証券市場の活性化を図っていく。
金融再生プログラムにおいては、主要行の不良債権比率(2002年3月期に8.4%)を2005年3月期に4%台に低下させることを目標としている。そして、金融システムの安定確保の観点からペイオフについては不良債権問題が終結した後の2005年4月から実施することとした。また、新たな企業再生の枠組みとして産業再生機構を設立した。さらに、公的資本増強行が金融庁に提出する経営健全化計画の大幅な未達先に対して、業務改善命令を発出するなど、銀行に対するガバナンスを強化した。9月に提出された新たな経営健全化計画は、各行とも相当な覚悟を持って策定したと受け止めており、その着実な履行を期待している。その他、引当に関するDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)的手法の導入や特別検査の再実施により、資産査定を厳格化した。
金融審議会第二部会により「信託業のあり方に関する中間報告書」(7月28日)が提出されたことを受け、現在、信託業法改正案を準備中である。受託可能財産制限を撤廃し、知的財産権を含む財産権一般を受託できるようにするとともに、一般事業会社に信託会社を解禁する。これが産業金融の円滑化につながることを期待している。
金融審議会第二部会の自己資本比率規制ワーキンググループにより、金融機関の自己資本への繰延税金資産の算入の適正化に関する議論の経過報告が公表された(7月28日)。報告では、繰延税金資産の割合を将来的に低下させるため、銀行関係者の合理的な自己資本政策、および、行政による監視・促進策を求めている。この問題は、引き続き、ワーキンググループにおいて検討していく。
金融審議会第二部会報告「金融機関に対する公的資金制度のあり方について」(7月28日)においては、新たな公的資金制度の必要性を含めて多岐にわたる検討がなされた。その上で、仮に制度を整備する場合には、公的資本増強は「収益力改善等に向けた経営改革を行い、健全な金融機能を発揮し得る」といった観点から幅広い提言がなされている。これを受けて、庁内にプロジェクトチームを設置し、現在、実務上の問題を含めて総合的な検討を行っている。
中小・地域金融機関については、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(3月28日)に基づき、2004年度までを集中改善期間として、不良債権問題の解決を目指している。
保険業の信頼確保および保険契約者保護に向けて、2005年度までの生命保険会社の破綻に対応するセーフティネットの整備、および、予定利率の引き下げスキームの導入を行った。
「貯蓄から投資へ」の流れを加速する「証券市場の改革促進プログラム」は、証券取引法の改正(5月)などにより、制度整備が完了しつつある。証券仲介業の創設、ラップ口座の円滑な開設・運用のための制度整備、内外の証券取引所との連携・統合を可能とする持株会社制度の導入、主要株主ルールの厳格化などが実現した。その他、米国の一連の会計不祥事などを踏まえ、会計士、監査法人に対する監督を強化するため、公認会計士法を改正した。
ディスクロージャー制度に関しては、2004年4月より、貸借対照表および損益計算書の四半期開示の義務化を目指している。目論見書による開示のあり方については、今後、ディスクロージャーワーキンググループで検討を行う
証券決済のペーパーレス化については、すでに実現したCP(コマーシャル・ペーパー)、社債・国債等に続き、株式等についても、法案の提出を準備中である。
金融庁の2004年度税制改正要望においては、個人による少額の株式投資について一定の投資額を上限とした優遇措置の導入、および、金融商品課税の一体化に向けて、上場株式等の譲渡損失と配当との損益通算を可能とすること、などを要望している。