10月7日/経済法規委員会(共同委員長 小林正夫氏)

国際会計基準審議会(IASB)における最新の活動状況等について


Introduction
経済法規委員会では、世界中で通用する会計基準の策定を目指す国際会計基準審議会(IASB)における最新の活動状況等について、IASBに日本から唯一参加している山田辰己理事から説明をきくとともに意見交換を行った。

I.山田理事説明要旨

IASBで現在進行中のプロジェクトは、業績報告、保険会計、年金会計、金融商品等7つある。今後取り組むプロジェクトは2つ、新規プロジェクトはリース等の4つが予定されている。しかし、2005年以降、欧州連合域内の上場企業が国際会計基準を統一適用することが決まっているため、実務上の準備作業が必要であるとの理由から、2004年3月までには欧州企業が適用すべき一連の基準が確定していなければならない。そのため、2004年中盤までは新規プロジェクトに着手するのは困難な状況にある。

業績報告と保険会計はサンセット・レビューの対象である。サンセット・レビューとは、プロジェクト開始後2年経過しても論点整理や公開草案等の成果物の公表に至らない項目については、その存続を含めてプロジェクトのあり方を検討するために見直しを行う手続であり、IASBの限られた資源を有効活用するために導入された。

業績報告プロジェクトは、現行の損益計算書による純利益概念を廃し、期首と期末のストックの評価差額(時価の変動分)に基づく包括利益のみを用いた計算書の導入を目指す、IASBと英国会計基準設定主体(ASB)との共同プロジェクトである。サンセット・レビューによる今後の予定は不明であるが、これまでの検討において各国でフィールド・テストを行った結果、米国と異なる様式での導入に異論が強かったこともあり、米国会計基準設定主体(FASB)の意向次第とされている。10月第4週には、IASBとFASBが議論する予定であり、何らかの方向性が出る可能性がある。

年金会計については、退職給付債務の見積りの変更等から生じる数理計算上の差異を発生時に一括認識する方向で暫定合意されている。現在は、コリドー・ルールに基づいて、一定の範囲内(確定給付債務もしくは年金資産のいずれか大きい方の10%)の変動は認識する必要がなく、かつ、10%超の差異は従業員の平均残存勤務年数にわたり遅延認識が認められているが、IASBでは、コリドー・ルールを廃止し、遅延認識を禁止する予定である。

II.日本経団連側の要望

年金会計については、遅延認識でも注記によって財務諸表利用者は必要な情報を得ることができる。しかし、一括認識が強制されると企業経営への影響が甚大となり、各国とも年金制度が維持できなくなる。いきなり暫定合意する手続きにも問題があり、現実を踏まえて議論を進めてほしい。

《担当:経済本部》

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