経済分析研究会(部会長 大野木 克信氏) /12月19日
設備投資、個人消費とも本格的な回復は期待できず、95年の景気回復は緩やか
経済分析研究会では、日本銀行の堀井昭成経済調査課長を招き、経済分析のための統計の改善策ならびに95年経済の展望と問題点について検討を行なった。
95年の経済は、設備投資ならびに個人消費の本格的な回復が期待できず、加えて、公共投資、住宅投資の下支え効果も低下することから、景気回復のペースは緩慢となることが予想される。
- 95年度の成長率見通しは平均1.9%
民間調査機関による95年度成長率見通しは、平均1.9%であり、政府見通し2.8%をはるかに下回る。過去の景気回復期と比べると、設備投資が低迷しており、回復力は弱い。
- 貿易不均衡が続き、円高の大幅な修正は見込薄
- 生産の海外シフトに関連する輸出が増加しているが、95年以降は、逆輸入が大幅に増加することが見込まれることなどから、貿易黒字は縮小に向かう。
- しかし、依然として、日米間の大幅な貿易不均衡が続く。したがって、米国で、利上げが実施され、インフレ懸念が払拭されても、円高の大幅修正は期待できない。
- 企業収益が設備投資を左右
- 最近の設備投資は、企業収益ならびにキャッシュ・フローに大きく左右されている。とりわけ、従来、景気を先導する役割を果たした中小企業に設備投資の動意がみられない。
- 94年の乗用車販売台数は年初の予想を下回ろう。自動車業界においては、販売回復に確信が持てず、また、設備過剰感があるため、能力増強投資には慎重である。
- 中長期的な展望が描けないことが、設備投資が回復しない原因となっている。
- 首都圏におけるオフィスの空室率は15%に達しているが、96年には、大型のオフィス供給を控えており、供給過剰はピークを迎える。今世紀中には建設投資は回復しないとみられる。
- わが国企業の設備投資に占める海外の割合は1〜5%程度との推計され、海外生産拠点の拡大が、マクロの設備投資を抑制する効果は小さい。
- 個別業界では、国内の設備投資を抑制し、需要の伸びている海外では、積極的に設備投資を行っているところも多い。
- 個人消費の本格的回復は期待できず
所得環境ならびに雇用情勢の大幅な改善が見込めないため、個人消費の本格的回復は期待できない。ただし、最近は、物価の下落が実質ベースの個人消費を支えている。
- 住宅投資、公共投資の下支え効果は低下
- 最近、分譲住宅需要にかげりがみられる。95年において、分譲住宅建設は高水準で推移するため、大幅な在庫を抱える懸念がある。
- 95年度の公共投資については、94年度予算分の執行が相当ずれ込んだとしても、大幅な伸びは期待できない。
- 資金需要は低迷
- マネーサプライ(M2+CD)は名目GDPの伸びを若干上回っているが、銀行貸出は、設備投資の低迷等を反映して、依然として落ち込んでいる。
- 資産デフレの影響を定量化することは難しいが、企業ならびに消費者マインドを冷やす惧れがある。また、金融機関への影響も小さくない。
- 経済実態を反映した統計の整備が必要
- 現行の家計調査、小売販売に関する統計では、個人消費動向を的確に把握することは難しい。また、消費者物価指数についても、現実の物価の動きとの乖離がみられる。経済実態を反映した物価統計を整備する必要がある。
- 適時適切な経済分析のため、実質GDP統計発表の早期化、鉱工業生産予測指数の拡充、中小企業統計の整備等が期待される。
- 地方公共団体の決算に関する統計の公表が非常に遅いため、公共投資の動向と効果の分析に制約がある。
- 米英に倣って、政府は、各種統計発表のスケジュールを予め公表すべきである。

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