第113回景気動向専門部会(司会 遠藤理財部長)/1月10日

生産の回復など景気に明るい兆し


景気動向専門部会では、最近の経済動向について関係省庁、日本銀行より説明を聴取するとともに、為替、株式、金融市場の展望について意見交換を行なった。
公共投資等の政策効果が具現化し、個人消費も堅調に推移するなか、生産も漸く持ち直しの兆しがみられるなど、景気に明るい兆しが広がっており、これが株価にも反映している。96年度の日本経済は緩やかな回復が期待されるなか、価格調整、産業構造調整、バランスシート調整など構造調整圧力が重く、民需主導の自律的回復は容易でないとの見方もある。
以下は、懇談の概要である。

  1. わが国経済は緩やかな回復へ
    1. 昨年春以降、日本経済は足踏み状態が続いたが、再回復に向けた明るい兆しが幾つかみられ始めており、今後緩やかな回復が期待される。10月の景気動向指数のDIは先行指数、一致指数とも6カ月ぶりに50%を超えた。

    2. 95年半ばまで経済の足を引っ張っていた公共投資、住宅投資などの政策関連需要は、明確にプラスに転じており、今後も増加基調が持続していくものと思われる。また、個人消費は大型小売店の売上高、乗用車販売などで堅調な動きがみられる。設備投資も10月の機械受注の民需(船舶・電力を除く)が前月比で11.8%増と大幅に回復する等、先行きに大きな期待が持てる。

    3. 11月の生産は11月末時点での前月比微減との予測に反し、1.3%増と2か月続けての増加となった。12、1月も生産の増加が予想されており、生産は持ち直しの兆しがみられる。在庫は依然として意図せざる積み上がり局面が続いているが、一部に積極的な積み増しもみられる。

    4. 雇用情勢は11月の有効求人倍率が0.63%と前月より0.02%改善する一方で、失業率が若年層の失業者の大幅増により3.4%と最高値を更新するなど、明暗入り交じった動きがみられる。経済情勢を勘案すると、急速に雇用情勢が悪化するとは考えにくいが、今後の動向に注意が必要である。

    5. 11月のマネーサプライ(M2+CD)は前年比3.5%増と10月より0.8ポイント上昇したが、一時的要因により増幅された面もある。また、11月の銀行貸出は前年比2.0%伸びているが、これは住宅金融公庫など公的機関の貸出しの肩代わりを行なっていることが大きく影響している。このように、金融指標には一見明るさがみられるが、割引してみる必要がある。

    6. 96年度上期は日本経済のゆるやかな回復が予想されるが、96年度下期に回復が持続していくかについては見方が分かれる。
      すなわち、(1)輸入増等による価格調整、(2)産業構造調整、(3)バランスシート調整などの構造調整圧力がわが国経済に重くのしかかり、景気対策の効果が切れる年度下期に景気が減速するとの見方がある一方、情報関連分野、アウトソーシング事業など新規事業分野の新しい成長の芽も出ており、公共投資の上積みも期待できることから、下期は引き続き景気回復が続くとの見方がある。

  2. 金融・為替・証券市場の展望
    1. 金融市場
    2. 短期金利は景気回復感から若干上昇する可能性もあるが、短期プライムレートが上昇するまでには至らず、低位安定が続くであろう。
      長期金利は春先にやや強含んでも、上昇基調に転じることはない。国債、地方債などの増発が予想されるが、資金運用難にある運用サイドから買いが入ることが見込まれ、需給バランスが大きく崩れることはない。年度を通して、低位安定の中での揉み合いが続こう。

    3. 為替市場
    4. 中長期的にみると円ドル相場は、数年間は一定のレンジで推移するが、日米の物価上昇率格差が開いていくと、1〜2年間の調整過程を経て、新しいレンジに移行してきた。87〜92年には円ドル相場は1ドル= 125円〜 150円のレンジで推移したが、この間、日米の物価上昇率格差は15%程度開いた。93、94年はこの格差を調整すべく1ドル=100円に向けて、円高が進行した。今後は1ドル=90〜110円という新しいレンジで推移していくものと思われる。

    5. 株式市場
    6. 景気の上向き期待がある中、円高修正の定着、低金利の持続、企業のリストラ効果の具現化に伴う企業業績の回復により株式市場は2万1000円を狙う展開にある。抜本的な税制改革、規制緩和が進めば、株価の更なる上昇が期待できる。
      ただし、金融機関の住専処理のための株式の益出しを控えていること、また現在の株価の急回復が外国人を中心とした積極的な買いに支えられていることなど懸念材料もある。

    7. 機関投資家の動き
    8. 為替、株式市場が明るい展望にあるにもかかわず、機関投資家は株式や外国債券に対して強い投資姿勢に転じられない。資金調達コストが5%と高止り、運用に難しさがある。


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