第114回景気動向専門部会(司会 遠藤理財部長)/2月2日

景気は当面緩やかな回復へ


景気動向専門部会では、最近の経済動向について関係省庁および日本銀行より説明を聴取するとともに、構造調整(産業構造調整、価格調整、バランスシート調整)の進展状況等をめぐり意見交換を行なった。公共投資等の政策的需要が景気の牽引役となり、個人消費と設備投資が緩やかに回復し、生産も持ち直しており、景気は足踏み状況から脱し、再び緩やかな回復に向かっている。ただし、構造調整圧力が残るなか、景気回復の基盤は脆弱であり、政策的需要の効果が減殺されるものと見込まれる96年度下期以降の景気動向は不透明である。
以下は、懇談の概要である。

  1. 景気は緩やかな回復に向かう
    1. 95年春以降、景気は足踏み状態が続いたが、最近、公共投資等の政策的需要が景気を牽引し、個人消費や設備投資が緩やかに回復している。景気動向指数も11月の先行指数が2カ月連続して50%を超えるなど、明るさが見られ始めている。

    2. 12月の生産は震災復興関連、住宅関連および電気機械工業の伸びが寄与し、前月比0.8%増と3カ月続けての増加となった。1、2月も生産の増加が予想され、生産は持ち直している。12月の出荷も同0.7%増と3カ月連続で増加となった。

    3. 景気の緩やかな回復に先行する形で、株価は上昇し、長期金利は幾分強含んでいる。また、マネーサプライは基調的に緩やかに伸びている。

    4. 他方、雇用情勢については、有効求人倍率が9月の0.60倍から12月には0.65倍に上昇するなど需給面では改善の兆しがみられるものの、完全失業率は3.4%と最悪の水準にあり、全体として依然厳しい状況が続いている。

    5. 日本経済は今後緩やかな回復に向かうものと思われるが、構造調整圧力が残っており、景気回復の基盤は海外の景気や円高など外的ショックに対して依然脆弱である。公共投資の景気浮揚効果が次第に減殺され、また、米国経済に下振れリスクもあることから、96年度下期以降の景気動向は不透明である。

  2. 構造調整の進展状況
    1. 産業構造調整
      1. 1ドル=100円程度の円高修正では、生産拠点の海外移転は止まらない。特に、わが国企業の海外生産比率は9%程度と米国の25%やドイツの20%に比べ低い水準にあり、海外シフトは今後趨勢的に増える可能性がある。
        こうした動きに加えて、大企業を中心にリストラの一貫として海外資材調達の積極化を図っており、これらが中小企業の収益および設備投資の回復を遅らせている。

      2. 既存産業にかわり、情報通信関連産業の成長が期待されているが、この産業は海外からの資材調達の比率が高い上、経済全体に占めるウェイトは低く、自動車産業のような景気の牽引役は期待できない。
        産業構造調整は未だ道半ばであり、規制撤廃・緩和の一層の推進とともに、雇用の流動化等が求められる。

    2. 価格調整
      1. 小売売上の動向をみると、93年から94年前半にかけては、数量要因が大きくマイナスに寄与するなどデフレ的であったが、94年後半からは単価が落ちる一方で、数量要因がプラスに転じており、現在の価格下落現象はディスインフレであると見られる。この価格下落には、スーパーの開発輸入や流通サイドの合理化など供給面の合理化が大きく寄与している。
        製造業も94年第2四半期より、数量の大幅な伸びが価格面の減少を補い、収益は回復基調にあり、これが設備投資の増加に結びついている。

      2. 最近、全体として物価の下落傾向に歯止めがかかりつつあるが、生産性の低い非貿易財産業分野については規制緩和による価格下落圧力が継続していくとみられる。

    3. バランス・シート調整
    4. 製造業の有利子負債残高の対売上高比率は最近縮小しつつある。しかし、非製造業についてはこれがバブル期の水準で高止まる一方、投資効率が低下しており、前向きの経営姿勢に転じられない。
      他方、企業の期待成長率が低下していることから、商業地を中心に地価の低迷が続き、特に中小の建設・不動産会社にマイナスの影響を及ぼし続けている。
      現在の緩やかな回復の下では、バランス・シート調整圧力の解消には時間がかかる。


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