国際協力プロジェクト部会(部会長 由布震一氏)/5月7〜9日

現代版シルクロードの実現に向けて


経済協力委員会国際協力プロジェクト部会では、5月7日から9日にかけて北京にて開催された「シルクロード21(新欧亜大陸ブリッジ)」区域経済発展国際会議に経団連代表団20名(団長:根上卓也神戸製鋼専務)を派遣した。同会議は、中国政府が国連、EU、アジア開発銀行、世界銀行など国際機関の協力を得て開催したもので、ジン・ヨンジェン国連事務次長、ブリタン欧州連合(EU)副委員長をはじめとする国際開発機関の幹部、中央アジア、中東、東ヨーロッパなどのシルクロード21沿線区域36カ国の政府および民間企業関係者、学者など約400名が参加し、沿線区域の運輸・通信などのインフラ整備、貿易・直接投資などの経済協力の促進、持続的発展の可能性などについて調査結果を報告しあうとともに活発な意見交換を行なった。
以下は宋健中国国務委員兼国家科学技術委員会主任とブリタンEU副委員長のスピーチの要旨および会議の概要である。

根上団長

  1. 宋健中国国務委員兼国家科学技術委員会主任スピーチ要旨
  2. 本年3月にバンコクで開催されたアジア・EU連合首脳会議では、アジアとヨーロッパの対話の場を増やし、両地域の経済協力を促進していくことが合意されたが、これを受けて本日、具体的に「シルクロード21」沿線における経済協力について話し合う場を設けることができたことを光栄に思う。

    「シルクロード21」の距離は、中国連雲港から新疆、カザフスタン、ロシアを経てロッテルダムにまで至る約11,000kmである。そのうち4,131kmが中国国内を通り、沿線区域は国土の37%、全人口の3分の1を占めることから、沿線区域の開発が国内経済に与える影響は多大である。
    そのため、中国政府は沿線区域の開発計画ガイドラインを作成し、第9次5カ年計画に盛り込んだ。

    「シルクロード21」沿線の開発は、第1に国際的協力体制に基づいたインフラの整備と効率的運営の確保、第2に貿易・投資環境の整備、第3に雇用機会の創出による貧困の撲滅および環境との調和が要となる。国際開発機関および先進国の協力が不可欠である。

  3. ブリタンEU副委員長スピーチ要旨
  4. この会議を通じてヨーロッパとアジアの関係が一層強まることを願う。

    インフラの整備は、東西交流を促進する上で最も重要であるが、あくまでもマーケットベースで進められるべきである。BOT(ビルト・オペレート・トランスファー)方式の活用も考えられる。

    沿線区域の協力促進のためには、各国が法的枠組みを整備し、共通のルールに基づいた多国間貿易体制を構築することが必要である。その意味で重要な役割を担っているWTOに中国が早く加盟することを願っている。

    通信網の整備は、「シルクロード21」を多機能な東西交流のパイプにするうえで不可欠である。残念ながら、WTOの電気通信分野における自由化交渉は先送りになったが、来年2月のデッドラインまで粘り強く調整を行なっていくつもりだ。

    EUは、中国の持続的発展のために長期的観点から支援していく方針だ。具体的には、人材開発、民間交流の促進、環境保全、経済・社会・法律面での改革、貧困撲滅などの面で協力を行なっていく。経済発展の障害となりうる環境破壊については、特に力を入れていきたい。

  5. 会議概要
    1. オープニング・セレモニーにおいて、国連やアジア開発銀行など国際開発機関代表より、「シルクロード21」区域の経済開発調査やプロジェクトに対し、積極的に協力するとの意向が明らかにされた。

    2. 1日目午後の全体会議では、アジア開発銀行、国連アジア太平洋経済社会運営委員会(UNESCAP)などから「シルクロード21」のグランド・デザインが紹介された。経団連代表団からは、「シルクロード21」区域の開発に対するわが国経済界の期待を表明するとともに、経済協力委員会国際協力プロジェクト部会で取り上げてきた「中国新疆ウイグル自治区産業開発調査」(94年ECFA実施)に基づき、「シルクロード21」の中核に位置する新疆ウイグル自治区の潜在的発展の可能性と開発のシナリオについて報告した。

    3. 2日目は、(1)運輸・通信などインフラ整備、(2)貿易および直接投資の促進、(3)持続的発展の可能性の3つの分科会に分かれ、国際開発機関やヨーロッパ・アジアの調査研究機関、中国政府および地方自治体、沿線国の政府代表より「シルクロード21」区域の開発に関する研究が報告され、活発な意見交換が行なわれた。

    4. 会議を終えるにあたり、シルクロード区域の経済開発は、各国のさまざまな文化的、歴史的背景を念頭に、国際的な経済協力のもとに進められていくことが確認され、今次会議の内容をさらに発展させ沿線区域の持続的発展を実現するために政府、民間企業、NGOからなる「欧亜経済協力フォーラム」を設置し、定期的に情報交換を行なうことが合意された。

  6. その他
  7. 経済協力委員会では、同フォーラムの今後の活動をフォローするとともに、「シルクロード21」沿線区域へのミッション派遣など、具体的な協力の可能性を検討していく。


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