経団連くりっぷ No.42 (1996年10月24日)

なびげーたー

首都機能移転にむけ本格的議論を

産業本部副本部長 永松恵一


解散・総選挙の影響で国会等移転審議会の委員選定や活動開始が遅れているが、わが国は政治・行政、経済、社会などあらゆる面で構造改革を迫られており、経団連では、首都機能移転をその起爆剤として位置づけ、活動している。

  1. 首都機能移転の意味
  2. 首都機能移転は、そもそも一極集中の是正と国土の均衡ある発展、経済と政治の中枢機能の分離による災害に強い国づくり、住みやすい東京への再整備という目的がある。加えて最近では、省庁再編等の行政改革、地方分権、規制緩和の一層の推進等の起爆剤として位置づけられている。『国会等の移転に関する法律』の前文においても概ね同様の趣旨のことが謌われている。

  3. 主な慎重論、反対論について
    1. 東京の人口や出荷額は減少しており、一極集中の流れは変わったという意見であるが、絶対的な過密水準を考えるべきである。個々の住民レベルでみれば、通勤地獄、高・遠・狭といわれる住宅事情など多少の改善があっても、住みやすさにはほど遠い。むしろ移転を好機として捉え、跡地の有効利用を含め、東京再整備のグランドデザインを描くことこそ都の役割である。

    2. 14兆円もの巨費を投じることは財政危機に拍車をかけるものであり、一方、それだけの金があるなら、もっと有効に活用すべきであるという意見であるが、歳出入構造の抜本改革、公共投資の重点配分により、十分捻出できる。そもそも14兆円の新都市建設費には民間支出が相当分含まれており、しかも10〜20年の長期にわたるプロジェクトである。行政機構や機能のスリム化は当然必要であるが、世界から注目され、子孫に継承するに値する新都市の建設に必要な資金は、重点配分すべきである。

    3. 行政改革や地方分権は、首都機能移転とは関係なく先行して進めるべきであるとの意見である。この点について、筋として異論はなく、経団連でも、例えば規制緩和を最重要の課題としてとらえ、かねてより具体的項目をとりまとめて、その実行を政府に求めている。問題は、今日までの行革論議をみても、本丸ともいうべき分野への切り込みは百年河清を待つに等しく、この際、首都機能移転という大きな起爆剤を準備し、引っ越しの計画を具体化させることが重要である。

  4. 首都機能移転推進委員会の活動
  5. 当委員会(河野俊二委員長)では、まず首都機能移転の必要性についてのコンセンサスづくりのため、経済界内部の議論の活発化、東京都との意見交換、セミナ−の開催、アンケ−ト調査の実施、東京再整備のためのビジョンづくり等の活動を予定している。目下、東京都と移転立候補地域の動きが目につく程度で、国民的な議論はこれからである。重要なことは、21世紀に向けた魅力ある国づくりであり、首都機能移転もそうした構造改革の一環として位置づけることである。


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