経団連くりっぷ No.42 (1996年10月24日)

経団連意見/10月15日

多角的自由貿易体制のさらなる促進を目指して

〜世界貿易機関(WTO)シンガポール閣僚会議に望む〜


貿易投資委員会(委員長:北岡 隆氏)では、本年12月、シンガポールにて開催される第1回閣僚会議に向け、わが国経済界の自由貿易体制への支持を改めて明らかにするとともに各国に対してWTO協定の遵守とその精神に反する措置を早急に改善することを求める意見書をとりまとめた(10月15日の第579回理事会で承認)。以下はその概要である。

  1. WTOと多角的貿易体制に対する基本的な考え方
    1. わが国経済界は多角的自由貿易体制ならびにその推進機関として創設されたWTOの健全な機能の維持・強化を全面的に支持する。
    2. WTOシンガポール閣僚会議の政治的な推進力によって、自由貿易体制が前進することを期待する。
    3. WTOの通常の活動(紛争処理、貿易政策検討制度(TPRM)、等)における各国政府ならびにWTO当局の努力を支持する。
    4. WTOの本格的な機能促進のためには、本年12月のシンガポール閣僚会議後、2000年に向けた取り組みと各国の理解が不可欠である。現在2年に1度となっている閣僚会議を毎年開催することも検討すべきである。
    5. わが国政府が、交渉分野に応じ意見交換や提案等を通じて発展途上国と他の先進国との意見調整において、さらに積極的な役割を果たすことを望む。
    6. 中国のWTO加盟は多角的自由貿易体制を維持する上で不可欠なものである。中国のWTOへの早期加盟を支持する。
    7. WTOの場での地域経済統合に対する審査規律ならびに審査機能を強化し、多角的自由貿易体制の精神に反する側面があれば、その改善を求めるべきである。
    8. 貿易と投資は相互に密接な関係となっていることから、WTOでの投資に関する議論の開始を求める。
    9. 経団連としては、WTOならびに世界貿易体制に対するわが国経済界の意見の反映に努めるとともに、海外の経済団体と連携しての取り組みを強化していく。

  2. シンガポール閣僚会議の議題に関する提言・将来の課題に関する考え方
    1. UR合意の実施
    2. WTOの信頼性を高め、機能強化を目指すためには、各国がUR合意を着実に実施することが不可欠である。シンガポール閣僚会議においてUR合意の確実なる実施を各国閣僚が再確認することを望む。

    3. 「ビルト・イン・アジェンダ」の確実な実行
    4. WTO協定に将来の交渉・検討等が定められているサービス貿易一般協定、ダンピング防止協定、知的所有権貿易関連協定(TRIPs)などの「ビルト・イン・アジェンダ」の確実な実行を求める。とりわけ、わが国経済界は、一部諸国によるダンピング防止措置の恣意的発動が、加盟国の総意である自由貿易体制の精神を損ない、世界を保護主義に傾かせる恐れがあることを強く懸念している。

    5. 貿易と環境
    6. 持続的成長のためには環境保護が必須の要件となるが、当該分野では先進国と発展途上国の間での意見の相違が顕著である。両者に建設的な議論を促すべく努力を払っている日本政府の対応を評価するとともに更なる貢献を期待する。

    7. 更なる自由化
    8. UR合意時よりも関税率を引き下げるという「更なる自由化」を今後も継続すべきである。特に、医薬品、化学品、情報技術協定(ITA)における取り組みを重視する。

    9. 新たな課題
    10. 将来に向けた自由貿易体制の更なる発展を目指し、WTOにおいて以下の取り組みを実施することを求める。
      1. 「貿易と投資」に関する検討の開始
      2. 地域経済統合のWTO整合性に関する規律の見直しならびに審査の強化
      3. ダンピング防止協定における規律の強化
      4. 紛争解決機能の強化


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