経団連くりっぷ No.42 (1996年10月24日)

第29回東北地方経済懇談会/10月2日

新しい東北の創造に向けて


21世紀へ向けた「創造性あふれる経済社会の構築と地域の自立」をテーマに、経団連・東北経済連合会(東経連)の標記懇談会が、仙台にて開催された。懇談会では、経済構造改革に向けての課題、グローバル化の推進、新しい国土づくり等について意見交換を行なった。当日は、東北側から明間東経連会長をはじめ地元経済人約 280名が、経団連からは豊田会長、久米・末松・青井・樋口・熊谷・古川・北岡の各副会長が出席した。

  1. 明間輝行東経連会長開会挨拶
    〔東北電力会長〕
  2. 明間東経連会長

    東北地方の景気は緩やかな回復基調にあるが、不安材料も多く、とりわけ大企業を中心とするリストラ等の構造調整圧力や産業空洞化の影響は極めて深刻である。こうした中、地元では、真に自立した足腰の強い地域経済の構築に向け、努力を重ねている。政府においても、規制撤廃・緩和や地方分権などの行財政改革をはじめ、経済構造の抜本改革に取り組むべきである。
    こうした改革を実現するにあたっては、政治の強力なリーダーシップが求められる。次期衆院選においては、山積する政策課題に勇断を持って取り組む安定政権が誕生することを期待する。

  3. 懇 談
    1. 地方分権の推進に向けて
      友田 昇氏(東経連常任理事/福島テレビ社長)
    2. 東京一極集中を是正し、国土の均衡ある発展を図るためには、地方分権が不可欠である。政府の地方分権推進委員会における検討は、各省庁の激しい抵抗によって難航しているが、世論の喚起によって、中央省庁の壁を打ち破る必要がある。地方分権のポイントは、
      1. 国と地方の役割分担の見直しと国から地方自治体への権限の移管、
      2. 地方の税財政基盤の充実強化、
      3. 受け皿としての地方制度の見直しと地方自治体の自己改革
      であり、東経連でも、本年設置した専門委員会で、これらの諸課題について掘り下げた検討を行なう予定である。

    3. 東北ベンチャーランド運動について
      水戸部知巳氏(東経連副会長/山形日本電気相談役)
    4. 東北地方では、昨年4月に設立された東北ベンチャーランド協議会が中心になり、産官学あげて、域内企業の新規事業やベンチャー企業の育成に取り組んでいる。
      同協議会では、
      1. 新規事業立ち上げにあたっての資金や販路に関する「相談窓口活動」、
      2. FAXやインターネットによって会員間や支援機関をつなぐ「情報ネットワーク活動」、
      3. 環境やソフトウェアなど今後有望な分野について企業同士の交流会を設けるなどの「普及・啓蒙活動」
      に取り組むとともに、会員の新規事業に対して「東北ベンチャーランド奨励金」の交付を行なっている。

    5. 世界に開かれた地域づくり
      手島典男氏(東経連常任理事/仙台ターミナルビル社長)
    6. 東北各県において展開されている国際交流を紹介する。日本海側では、新潟の沼地開発の実績を持つ民間団体の協力がきっかけとなり、中国黒龍江省・三江平原開発が動き出した。山形ではパソコン通信を活用したモンゴル語の翻訳事業、秋田では釜山港との間の定期コンテナ便開設、青森では新たに開設されたハバロフスク線を活用したロシア極東地域交流などが推進されている。一方、太平洋側では、すでに整備が進んでいる国際空港・港湾を核としたグローバル化が急速に進展している。
      阪神・淡路大震災を教訓として、今後、各ブロックごとに国際交流の拠点となる本格的な空港や港湾を緊急に整備し、それらのネットワーク化を図ることが重要となろう。

    7. 新しい全国総合開発計画について
      鈴木彦治氏(東経連常任理事/サンエス会長)
    8. 「東北は一つ」を基本理念に本年5月、次期全総計画に対する提言をとりまとめたので紹介する。第1は、太平洋ベルト地帯中心の国土構造の転換を図る観点から、「ほくとう新国土軸」の形成を図るべきである。その根幹となる基礎的社会資本として東北新幹線の全線フル規格整備が必要である。第2は、災害に強い安全な国土づくりである。大都市圏からの人口や各種機能の分散に取り組むべきである。第3は、大競争時代に備えた地域経済の自立である。東北ベンチャーランド運動やインテリジェントコスモス構想の推進に取り組んでいる。第4は、世界に開かれた国土づくりである。どの地域に住んでも、世界と交流し直接世界を相手に活躍できる国土を目指すべきである。
      こうしたビジョンの実現のためには、規制緩和、行政改革、地方分権、首都機能移転などの断行が不可欠である。

    9. 首都機能移転について
      内池佐太郎氏(東経連副会長/福島県経営者協会連合会会長)
    10. 首都機能移転は、東京志向の国民の意識構造を一新するとともに、政経分離を図ることで、国政全体の改革を推進するものである。「国会等移転審議会」の設置により、首都機能移転は着実な一歩を踏み出した。
      首都機能移転の実現に向け必要なことは、第1に国民的な合意形成であろう。「今なぜ首都機能移転が必要なのか」「どのようなかたちで移転するのか」などを国民にわかりやすく訴え理解を得る必要がある。第2は、地元住民の理解と協力である。地域構造の変化に伴うマイナス面なども根気強く説明していくことが求められよう。第3は、移転先の選定を公正・中立に行なわなければならないということである。移転先は、移転の意義と効果を最大限発揮できる場所であることが基本であるべきである。


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