経団連くりっぷ No.42 (1996年10月24日)

経団連訪カナダミッション(団長 江尻宏一郎氏)/9月18日〜27日

新しいカナダを発見


経団連では、1989年以来7年ぶりに政策対話ミッションと情報通信および加工食品の2つの分野別ミッションからなる「経団連訪カナダミッション(Keidanren Business Partnerships Mission To Canada)」を9月18日〜27日に派遣した。同ミッションには合計約50名が参加し、カナダの政治・経済情勢を視察するとともに二国間の貿易・投資の拡大と多様化の可能性を調査した。

  1. 政策対話ミッション:9月18日〜20日
    (於:モントリオール、オタワ、トロント)
  2. 政策対話ミッションではオタワにてクレティエン首相はじめマーティン大蔵大臣、エグルトン国際貿易大臣、グッディル農務・農産食品大臣などの政府首脳とカナダの政治・経済状況について意見交換を行なったほか、中央銀行とCIDA(カナダ国際開発局)を訪問した。また、モントリオールとトロントにてカナダの企業幹部と二国間の貿易・投資関係について話し合った。以下はカナダ側の主な発言概要である。

    1. クレティエン首相発言概要
      1. カナダ経済は、全般的に良好である。経済成長率は93年より2%から4.1%の間を推移している。
      2. 財政赤字削減については、国民の理解を得ながら連邦・州政府が一体になって取り組んでいる。政権就任時の93年にはGDP比5.9%であったが、95年には4.2%まで減少した。97年には2.0%にまで削減される見通しである。2000年の均衡財政実現を目指している。
      3. ケベック州の分離・独立問題は、カナダ経済の不安定要因として取り上げられがちだが、心配は要らない。
      4. カナダは97年11月にバンクーバーにてAPEC閣僚会議を開催することから、97年を"アジアの年#と位置づけ国民にアジアとの関係強化をアピールしていく。日加関係は静かな良い関係を維持しつつ発展しているが、今後はアジアを念頭に置き日本とのさらなる関係の強化に努めていきたい。
      5. 来年5月に20周年を迎える日加経済人会議については、自分自身が設立に携わった経緯があることからたいへん親しみを感じている。現在、前向きに出席を検討している。
      6. 本年11月中旬の訪日の際、本ミッションの報告を受けることを楽しみにしている。

    2. その他会合における主要発言
      1. 経済状況ついて(マーティン大蔵大臣、テッセン中央銀行総裁)
        80年代後半から90年代初頭にかけてカナダ経済は高インフレ下にあり投機的投資が目立ったが、政府ならびにカナダ中央銀行のインフレ抑制策が功をなし、92年から95年まで0〜2%代を維持している。その結果、民間企業の大規模なリストラと記録的な設備投資、技術革新が進み、生産性が大幅に向上、国際競争力が大幅に改善されている。現在進行中のカナダの変化は国民も気づかないほど静かなものだが、確かで力強いものである。

      2. 投資環境について(エグルトン国際貿易大臣)
        海外からの直接投資はこの10年で着実に増加している。例えば、OECD加盟国からの直接投資(フロー)は、95年に前年度の60億ドルから112億ドルにほぼ倍増した。これは、カナダが常に米国を意識して投資環境を整備した結果であり、いかに優れた投資環境を有するようになったかを表している。カナダのGDPに占める法人税率と労働者の源泉徴収税率はG7の中で最も低い。その他、生活費、労賃、労働力の質、福祉医療環境の面でカナダは優れている。世界に開かれた市場を有するカナダをより多くの日本企業に知っていただきたい。

      3. 国際協力について(CIDAマティビエ副総裁)
        財政赤字削減のための大幅な歳出削減策により、ODA予算は年々縮小している。これに伴いCIDA(カナダ国際開発局)ではリストラを行なった。その結果、官僚主義が排除され組織は以前より活性化した。CIDAには、「産業協力プログラム(Industrial Cooperation Program)」というカナダの民間企業が開発途上国において公益性の高い事業を行なう際の資金支援プログラムがある。今後、BOTやBOO分野において日加民間企業間の協力が推進されていくことを望む。

  3. 分野別ミッション:9月20日〜27日
  4. 分野別ミッションでは、高付加価値製品の中でも特に著しい進歩を遂げていながら日本との接点がまだ少ない情報通信および加工食品分野に的を絞り、実務責任者、担当者で構成されるメンバーが投資と貿易、技術提携の可能性を探るためカナダ各地の民間企業および研究機関などを訪問した。各分野における協力の可能性と課題については、本年11月末のクレティエン首相来日の際に報告することになった。

    1. 情報通信分野ミッション
    2. (団長:伊原三菱電機副社長、副団長:島田三井物産常務取締役 他25名が参加)

      ニュー・ブランズウィック州、ニューファンドランド州、ケベック州、オンタリオ州、アルバータ州、ブリティッシュ・コロンビア州を訪問し、アニメーション・ソフトウェア、テレコミュニケーション・ネットワークやマルチメディア分野の視察をした。

    3. 加工食品ミッション
    4. (団長:財前三菱商事副社長、副団長:井口西友取締役 他19名が参加)

      オンタリオ州、ケベック州、サスカチュワン州、アルバータ州を訪問し、飲料、乳製品、シリアル穀物製品、赤肉産業を視察すると共にバイオテクノロジーや食品安全管理分野の研究機関を訪問した。

ハリス オンタリオ州首相(左)と江尻団長(右)


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