経団連くりっぷ No.42 (1996年10月24日)

日本・インドネシア経済委員会(委員長 中村裕一氏)/10月8日

最近のインドネシアの政治・経済情勢


スハルト政権下のインドネシアは、約30年間にわたって安定的経済成長を達成した自信を背景に、1994年のAPECインドネシア会議では域内の貿易・投資の自由化にイニシアチブを発揮した。しかし、今年に入って、WTOのルールに違反すると見られる「国民車構想」の強行や7月の暴動の発生など、これまでにない動きが相次いでいる。そこで、外務省アジア局の平松賢司南東アジア第二課長より、最近のインドネシアの政治・経済情勢について聞いた。

平松南東アジア第二課長発言要旨

  1. 政治情勢
    1. 7・27事件の評価
      今年7月、首都ジャカルタで暴動が発生した。これは、スカルノ元大統領の長女である民主党のメガワッティ総裁が5月に解任されたことを不当として、民主党本部を占拠していたメガワッティ支持派を、反メガワッティ派が襲撃したのをきっかけに起こったものである。暴動はジャカルタの一部に限られ、一方、インドネシア政府の対応は基本的に抑制の効いたものであった。問題は暴動の底辺にあるものは何かであり、その後のインドネシア政府の対応には若干気になる点もある。

    2. 選挙とポスト・スハルトへの展望
      来年の総選挙でも与党ゴルカルが勢力を維持する公算が高い。1998年の大統領選挙については、現在の情勢はスハルト7選に向かって動いている。後継者については、トリ・ストリスノ副大統領やハビビ研究・技術担当国務大臣、身内では大統領の娘婿であるプラボウォー少将や長女トゥトゥット女史(ゴルカル副議長)等の名前が挙がっているが、いまの時点では何もいえない。

  2. 経済情勢
    1. 国民車構想への対応
      そもそも国民車製造のライセンスを、大統領の三男フトモ・マンダラ・プトラ(通称トミー)の会社であるティモール・プトラ・ナショナル社(TPN)に優先的に与えたことが問題であった。その後、6月に出された大統領令で一年間の臨時措置として「一定の現地調達率を満たしたものであれば、国外で作られたものでも国民車として認定する#と規定していたことが、問題をさらにに複雑にしてしまった。TPN社は10月に韓国から完成車を無税輸入したが、これは内国民待遇や最恵国待遇などWTOルールの明らかな違反であり、わが国はEUや米国と調整の上でWTO提訴にと踏み切った。ただ、この問題を二国間関係全体には影響させないという日本の意向は、再三インドネシア側には伝えてきている。

    2. 最近の経済情勢の一般的評価
      日本やASEAN諸国からインドネシアへの投資額は、年々倍もしくはそれ以上の伸びを示している。今後の課題は、
      1. 過熱気味の経済の管理、
      2. 対外債務の管理、
      3. 経済収支悪化への対処
      の3つである。


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