経団連くりっぷ No.52 (1997年 3月27日)

駐欧州各国大使との昼食懇談会/3月12日

ユーロは予定通り99年1月から導入の予定


外務省主催の大使会議出席のため一時帰国中の駐欧州・NIS諸国の各国大使32人を招き、昼食懇談会を開催した。豊田会長、野上経済局長の挨拶に続き、3大使より経済・通貨統合に関する説明があり、活発な意見交換が行なわれた。以下がその概要である。

  1. 時野谷駐EU代表部大使
  2. 経済・通貨統合(EMU)を巡る最近のブラッセルでの議論を集約すると、
    1. ドイツ経済の状況が懸念されるものの、99年1月から一部の国でユーロが導入されることは間違いない。
    2. 当初からユーロが導入出来る国は、ドイツ、フランス、ベネルクス3国を含めた7〜8カ国と考えられている。
    3. 発足したユーロの市場における評価は、各国の経済収斂基準達成の状況と、欧州中央銀行の姿勢によって変わる。
    4. 発足したユーロに流動性を付与する為には、既存債権のユーロへの転換等の施策を検討する必要がある。
    5. ユーロが発足すれば、ドル、円に匹敵する国際通貨が誕生することとなり、国際金融市場の安定を目指した関係国間の対話の機会が増すと思われる。
    総合的に見て、EMUは大きな変革であるが、これに伴う個別の対応はゆっくりと進められるであろう。

  3. 松浦駐フランス大使
  4. フランスでは、欧州の多くの国が同じテンポで成長を継続すると考えるのは非現実的であり、ユーロを導入した5〜8カ国が中核となって欧州の“深化”の担い手となることを目指している。
    ユーロの導入には、フランス国民の6割程度が概ね好意的であり、政府も99年1月からの参加国を早期に確定し、欧州統合を“拡大”等の次のステップに進めたいと考えている。しかし、経済収斂基準達成を最優先する現政権の国内経済政策に対しては、既得権者からの反発も強い。政府は統合に前向きだが、国内的には多くの問題を抱えているのがフランスの実態である。

  5. 藤井駐英国大使
  6. EMUに対して、英国は主権と経済の両面から態度を留保している。つまり、欧州が、United States of Europeを目指すのか、民主主義国家の政治的集合体を目指すのかと言う問題であり、これは民主主義の政治的主体性として論じられている。経済的側面では、経済収斂基準の達成をしようとするあまり、デフレ効果がもたらされる可能性があると言う点である。また、フランクフルトの経済政策だけで、まちまちの各国経済間のバランスを保つことが可能か否かについても疑問視する向きが多い。
    英国は79年のサッチャー前首相の就任以来、徹底した民営化路線を歩んできた。この結果、経済成長率も失業率も欧州の平均に比して良好な状況にある。しかし、これがEMUによって大陸の官僚主義的傾向に引き戻されることになれば心情的にも抵抗があるであろう。


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