経団連くりっぷ No.54 (1997年 4月24日)
ルクセンブルグ ユンカー首相との懇談会(司会 若井ヨーロッパ地域共同委員長)/4月3日
政治と経済は欧州統合の車の両輪
経団連では去る4月3日、訪日中のルクセンブルグのユンカー首相を迎え、欧州統合を巡る懇談会を開催した。経団連側は、樋口副会長、若井ヨーロッパ地域共同委員長をはじめ40名あまりが参加した。首相は、蔵相時代にマーストリヒト条約の策定にも携わっており、欧州統合についてインサイダーの立場から有意義な説明を受けることが出来た。
ユンカー首相
統合の行方 1997年は、経済通貨統合(以下EMU)参加国の最終的決定の年となる。ルクセンブルグは小国ではあるが、経済収斂基準をすべて満足した唯一の国であり、その意味ではEUにおける発言権も大きい。
EMUに対して、特に英国のマスコミを中心にさまざまな憶測が出されている。しかし、欧州(大陸側)にはEMUの成功に向けた強い意志がある。昨年12月、ダブリンでまとめられた安定化協定も、EMUをより強固なものにするためのものであった。
欧州統合を成功に導くためにEMUは必要不可欠な要素であるが、同時に、21世紀の欧州を考えた時、中東欧圏への「拡大」も不可避な問題である。
私は、経済と政治が車の両輪とならなければ統合は推進されないと考えている。これは「拡大」の議論においても同様である。
英国およびドイツの対応 EMUを巡る英国議会の考え方は、与野党ともに「待ちたい」と言うのが本音と思う。しかし、個人的には英国がEMUに参加する日が来ると考えている。すでに、英国の産業界はEMUに対して前向きな姿勢を示しており、政府も参加に向けた決断をせざるを得なくなるだろう。
また、EMUにとって、その参加が必須とも言えるドイツの経済状況については、おそらく97年末までに、財政赤字のGDP比3%以内の基準を達成できるまでの改善が図られると考えている。
税制のハーモナイゼーション 税制のハーモナイゼーションは、一朝一夕に解決出来るものではないが、現在最低基準を15%に定めている付加価値税(VAT)については、近年中に改めて最低基準を定める動きがあるだろう。VATの税率について具体的なことはわからないが、ルクセンブルグは今後も定められた最低基準での運営を行なうつもりである。また、ルクセンブルグとしては、EMU参加による経済政策の大きな変更は考えていない。むしろ、法人税の30%への引き下げなど、今後も積極的な経済運営を継続する予定である。
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