経団連くりっぷ No.60 (1997年 7月24日)

社会貢献推進委員会(委員長 椎名武雄氏)/7月10日

NPO法案の成立に強い関心


社会貢献推進委員会では、いわゆるNPO法案の動向と、先の通常国会で継続審議となった「市民活動促進法案」について報告し、「市民活動を支える制度をつくる会C's(シーズ)」の松原明事務局長から説明を受けた。また、本年が大規模調査の年にあたる「1996年度社会貢献活動実績調査」の実施について審議するとともに、各専門部会や1%クラブの活動状況、昨年11月に設立された「日本NPOセンター」の活動状況などについて報告した。

  1. NPO法案について
    1. まず、事務局からいわゆるNPO法案の動向について説明するとともに、先の通常国会で衆議院を通過し、参議院で継続審議となっている「市民活動促進法案」について、その概要やこれまでの経過等について報告した。

    2. 「シーズ=市民活動を支える制度をつくる会C's」
      松原 明 事務局長説明要旨

      シーズは、5年計画でNPO法案を制定することを目的にして設立された市民団体の連合プロジェクトである。これまで、全政党のNPO担当者と積極的に意見交換するとともに、シンポジウムなどを多数開催してきた。
      ごく簡単に言えば、NPO法案では、市民活動団体が10人以上の会員と組織・書類をととのえて都道府県などに申請すれば3カ月以内に法人格が取得できる。既存の制度に比べ画期的な法案といえる。
      NPO法案は、行政の過度な管理・監督などが盛り込まれて不安な点もあったが、修正の過程でかなり改善されたと思われる。シーズのネットワークでは、法案の早期成立を望む声が強い。
      NPO法案によって、市民活動が組織化され、個々の市民や企業が市民活動に参加しやすくなり、市民活動の社会的認知が大きく進む。NPO法案が、共通基盤としての「市民セクター」発展の契機になればと考える。
      シーズでは、まずは次期臨時国会でのNPO法案成立に向け、全力で取り組みたいと考えている。

    3. 審議
      NPO法案に対する社会貢献推進委員会としての対応については、委員長と各専門部会が協議の上決定していく旨了解を得た。

  2. 1996年度社会貢献活動実績調査について
  3. 事務局より以下の通り報告し、原案通り調査を実施することが了承された。

    1. 本年度の調査は、93年度以来の大規模調査の年にあたる。「社会貢献活動支出額」などの通常の活動実績調査に加え、社会貢献活動に関する意識や詳細な活動事例などを調査する。

    2. 調査結果については、次回の社会貢献推進委員会で報告するとともに、「社会貢献白書1998」あるいはそれに類する形で広く一般に開示したい。

  4. 専門部会の活動状況について
    1. 社会貢献基盤整備専門部会(青木利元 部会長)
      当専門部会では、94年の発足以来、社会貢献活動を進めるための社会的基盤整備の一環としてNPOに着目し、検討を重ねてきた。今後ともNPO法案をはじめとする問題に関心をもちつつ、広く企業の社会貢献活動のあり方について検討したい。

    2. ボランティア専門部会(島田京子 部会長)
      これまで企業人のボランティア活動支援のあり方について検討を重ねている。企業とボランティア受入先のパートナーシップに関するヒアリングをはじめ、学校教育現場や地域社会、あるいは退職者のボランティア活動について検討したほか、ボランティアコーディネーターの役割等についても意見交換を行なっている。
      当面は長野オリンピック・パラリンピックをはじめとする大規模イベントのボランティアや、災害時と日常時のボランティア活動の関係などについて検討する。

    3. 社会貢献情報交流専門部会(加藤種男 部会長)
      土井前部会長を引継ぎ、今年度から部会長に就任した。
      当部会では、企業の社会貢献活動、ならびに企業とNPOとのパートナーシップ等に関してさまざまな観点からヒアリングを実施して課題を整理するとともに、抽出された問題点については社会貢献基盤整備、ボランティアの両部会とも連携をとりながら検討を進めることとする。

  5. 日本NPOセンターの活動状況について
    (和田龍幸経団連専務理事・日本NPOセンター理事)
    1. 昨年11月に設立された日本NPOセンターには私が理事に就任するとともに、椎名委員長、若原1%クラブ会長が評議員に就任した。6月にはNPO初の全国集会である「NPOフォーラム」が横浜で開催され、企業からも多数の参加があった。

    2. 経団連としては、今後とも同センターの活動を見守っていきたい。会員各位にもご理解・ご協力をいただきたい。

  6. その他
  7. 事務局より、1%クラブの活動状況と法人会員拡大のご協力のお願い、ロシアタンカー重油流出事故被害支援に関するアンケート結果などについて報告した。

  8. 懇談
    1. 三菱電機常務取締役 木内孝氏
      企業の社会貢献活動はトップの理解が不可欠であり、トップ自らが積極的に行動する必要がある。

    2. 日産自動車常務取締役 楠美憲章氏
      これまで、政・官・財の「鉄の三角形」という言葉がネガティブな意味でいろいろと使われてきた。今後は、政府・企業・NPOセクターがそれぞれ緊張関係をもちながらパートナーシップを組み、新たな三角形を形成していく時代を迎えよう。


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