経団連くりっぷ No.61 (1997年 8月28日)

関経連首脳との懇談会/7月29日

「明るく元気な関西づくり」に向けて


さる5月に関西経済連合会首脳が交替したのを受け、新宮会長(住友金属工業会長)はじめ同連合会首脳との懇談会を開催し、当面の課題等について意見交換した。
当日は、関経連から新宮会長、大庭、奥井、井手、藤井、千畑、渡辺、秋山の各副会長が、経団連から豊田会長、那須、末松、伊藤、今井、古川、北岡、辻、金井、前田の各副会長が出席した。

  1. 関経連側発言
    1. 新宮会長挨拶
    2. 会長就任にあたって「明るく元気な関西づくり」をキャッチフレーズに掲げた。そのためには、常に目標を定め、それに向けて一致団結していく必要がある。現在、最も熱心に取り組んでいるのが2008年のオリンピック誘致である。また、「実行」、「自立(自律)」、「連携」の3つを行動基準として掲げている。
      6大改革について、経済界は痛みを伴ってもやるべきことはやる、協力すべきことは協力することが重要である。6大改革には明示されていないが、重要な構造改革として税制改革と地方分権がある。税制改革については、法人税の実質的引き下げ、連結納税制度の導入等が重要な課題である。地方分権については、補助金、地方交付税の段階的廃止とこれに見合う地方への税源の委譲を目指すべきである。
      少子化対策として、子供を産むことに対するインセンティブを考慮する必要がある。
      公共投資の総額削減に異論はないが、21世紀に向けて重点的な投資を行なう必要がある。関西国際空港、大阪湾ベイエリア等はナショナル・プロジェクトとして思い切った投資をしてほしい。

    3. 阪神・淡路地域の経済復興、地球環境・エネルギー問題について
      大庭副会長(川崎重工業会長)
    4. 阪神・淡路地域のインフラの復旧は、ほぼ完了した。今後は経済の復興に重点的に取り組み、新しい発展を図ることが課題である。例えば、地震共済制度や災害時の広域的緊急支援のあり方等について検討、提案を行なっていく。また、世界に通用する新たな産業を創造することが不可欠であり、さる3月に新産業創造研究機構を設立した。
      経団連が取りまとめた環境自主行動計画は関経連会員の多くも関係するものであり、連携して実現に努力していきたい。また、12月に京都で気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が開催されるのに先立ち、関経連では9月にシンポジウムを開催する。さらに、COP3の支援実行委員会を設立した。

    5. 新産業の創出
      千畑副会長(田辺製薬会長)
    6. 関経連では、新産業創出システム(IIS: Industry Innovation System)の構築準備を進めている。IISの運営は任意団体のIIS Japanを設立して行なうことにしており、9月設立、10月事業開始に向けて準備を進めている。できる限り早く成功例を生み出していきたい。

    7. 経済政策、経済構造改革
      秋山副会長(関西電力社長)
    8. 関西地域の景気は確実な足取りで回復している。一方、中小企業では回復感が乏しく、業種間、企業間で二極化が進んでいる。
      このような原因としては、第1に、関西は生活関連産業のウェイトが高く、東南アジアとの競争に対して脆弱な産業構造になっていることがあげられる。第2に、高福祉・高賃金の影響があげられる。第3に、大企業が余剰人員活用のために内製化を進めたことにより、中小企業への発注が減ったことがある。第4に、設備投資が生産力増強につながっておらず、設備投資主導型の自律的な発展になっていないことがある。
      国、業種を越えた企業の提携、生産が進む中で、わが国企業がこれまでの囲い込み方式で乗り切っていけるのか疑問である。また、対日直接投資額は低水準に止まっており、日本は魅力ある国とみられていない。
      産業構造の転換に取り組むとともに、諸改革のビジョンを明確にし、投資意欲を高めていく必要がある。さらに、産業立国の必要性を明確に打ち出していく必要がある。

    9. 関西国際空港について
      井手副会長(西日本旅客鉄道会長)
    10. 関西国際空港は国際拠点空港としての役割を果たしつつあるが、競争力のある国際ハブ空港に育て上げるためには、2期事業の推進が不可欠である。2期事業については、国の第7次空港整備5カ年計画で最優先課題に位置づけられている。2007年の供用開始が目標であるが、そのためには平成10年度末には着工する必要がある。平成10年度予算で着工予算が確保されるよう要望していく所存であり、ご支援いただきたい。
      2期事業の上物整備事業に対する民間出資協力については、出資依頼のあり方について検討していきたい。今後ともご協力いただきたい。

  2. 経団連側発言
  3. 豊田会長より、「経済社会システムの改革にあたっては、経済団体間の一層緊密な協力が重要である」との発言があったほか、関経連側の発言を受けて、経団連側からは「国内のオリンピック候補地が1本化されれば、諸外国に対するPRなどで協力できる」、「新産業創造研究機構から、これからの日本を支えていくような新産業が生み出されることを期待している」、「大規模拠点空港を一刻も早く整備する必要がある。関西国際空港には21世紀における空の表玄関としての役割を果たしてほしい」(以上、古川副会長)、「12月のCOP3では、取りまとめに向け議長国としてのわが国の力量が問われる」(辻副会長)、「IISが21世紀に向けて新事業育成のリーディング・プロジェクトになると期待している。産業界自らが規制緩和を活用し新事業を伸ばしていくことが重要である」(北岡副会長)、「経済の活性化のためには、規制緩和・撤廃と税制改革が2本柱となる」、「環境問題を克服しながら、高コスト構造をいかにして是正していくか。官民挙げて取り組むべき問題である」(以上、今井副会長)といった発言があった。また、コーポレート・ガバナンスのあり方、法人税改革に関する経団連の取り組みについて説明があった。


くりっぷ No.61 目次日本語のホームページ