経団連くりっぷ No.61 (1997年 8月28日)

第45回北海道経済懇談会/7月31日

改革のさらなる前進と北海道経済の活性化に向けて


経団連・北海道経済連合会(道経連)共催の標記懇談会が、札幌にて開催された。公共投資依存型経済からの脱却を図る北海道経済界側が、地域ニーズにあった行政、21世紀を担う人材の育成、産業クラスターの創造などを訴えると、経団連側は豊田会長、今井・伊藤・前田・末松・北岡・古川各副会長が、行政改革、財政構造改革、法人税改革、教育改革、自由貿易・投資体制の確立、開かれた国土づくりなどを訴えた。

  1. 北海道側発言
    1. 開会挨拶
      戸田 一夫氏(道経連会長・北海道電力会長)
    2. 日本経済は回復基調にあるが、北海道では、実感として受け止め難いのが実情である。北海道の産業構造は、公共投資に依存する体質が根強く残っている。したがって、こうした時に、国の財政事情の逼迫による公共投資の削減が現実のものとなると、北海道経済は大きな打撃を被る。
      他方、こうした状況を踏まえ、いよいよ待った無しで、地域は自らの活路を見出さなければならない時に来ていると受け止めている。道経連としては北海道経済の活性化に向け、
      1. 北海道の産業構造の高度化を目指す「産業クラスター構想」、
      2. 新千歳空港を核とした国際化、
      3. 社会資本整備の推進、とりわけ北海道新幹線の早期着工、
      等に重点的に取り組んでいる。
      今後の地域経済を考えるうえでは、中央対地方という対立の構図で捉えるのではなく、国と地方が共に考えることが、より重要となろう。

    3. 行財政改革への取り組み
      山内 宏氏(道経連副会長・北海道拓殖銀行相談役)
    4. 橋本総理の強いリーダシップの下で行財政改革などの諸改革が進められているが、これらの改革は全国一律ではなく、地方の実情に配慮したものでなければならない。北海道は広域性と多様性をあわせ持つという他の地域にはない特異性を有しており、北海道に適した国の行政システムが必要となる。
      財政構造改革はわが国の最重要課題のひとつであり、来年度予算編成の基本方針においても公共事業費の7%削減が打ち出されているが、公共投資依存型経済の北海道では、極めて大きな問題である。この際、思い切った財政支出の配分の見直しを行ない、地域の実情にあった重点的な予算配分をすべきである。その意味においては、一度始めたら後戻りし難い公共事業を、事業主体の行政自らが見直すとして、北海道庁が導入を発表した「時のアセスメント」は全国から注目を集めている。

    5. 北海道の発展に向けた人材育成
      大森 義弘氏(道経連常任理事・北海道旅客鉄道会長)
    6. 現在、道経連では、産業クラスターの創造に取り組んでいるが、このような産業興しには、「自発心をもち、失敗しても諦めないで挑戦し、真剣に物事に取り組む」人材の育成が必要となる。北海道の耕地面積は、国際的水準にあるにもかかわらず、現状の農業は国際競争力を持たない。これは、国が経営者で、農家は従事者であるとする現在の農業基本法に問題があると考える。デンマークをはじめ諸外国では、確たる理念をもって農業経営者を育てており、国際競争に打ち勝つためには、日本においても農業に関わる教育形態を整える必要がある。
      北海道経済の自立・発展には、人材の育成が重要であり、道経連としても開拓当初のフロンティア精神に立ち返って、取り組む決意である。

    7. 日本の持続的発展に向けた北海道の役割
      三上 顯一郎氏(道経連副会長・北海道空港相談役)
    8. 変革の時代を迎え、北海道の役割が問い直されている。困ったときに中央がどうにかしてくれる時代は終わり、地域が考え、実行する時代に入った。北海道は自らの自立に向けたビジョンを描き、実行しなければならない。
      こうしたビジョンを描く上で必要な視点としては、
      1. 次世代型航空・宇宙関連技術、情報関連技術やエレクトロニクス技術などのさらなる集積、
      2. 農業とその関連支援産業、また農業機械関連技術、廃棄物技術やバイオ技術の育成、
      3. 極東・アジア地域との交流の拡大、
      4. 環境共生地域の形成、
      5. エネルギー開発拠点としての貢献、
      などをいかに図るかが重要である。

    9. 北海道産業クラスターの創造
      庄村 裕氏(道経連副会長・玉造社長)
    10. 産業クラスターの創造は、北海道経済界挙げての最重要課題である。現在、北海道産業クラスター創造研究会を組織し、北海道において競争力を持ちうる分野として「食」「住」「遊」の3つのドメインを抽出して、具体的振興策を検討している。最初に検討している「食」については、道内各地の基幹産業である農業、酪農、水産業を、農機具などの機械産業、肥料・農薬などの化学産業ならびに建築・土木産業、林業、鉄鋼業、運輸業、食品加工業、流通業、外食産業等の産業分野にいかに波及させるか、これらを地域プロジェクト、技術シーズといかに有機的、戦略的に結びつけるか、産業クラスター推進機構の設立など組織面での対応も含め、検討を続けていく。

  2. 経団連側発言
  3. 今井副会長が、「これまでの規制緩和で取り残されている地方自治体の上乗せ・横だし規制の問題を9月に予定している意見書に盛り込みたい」と発言、伊藤副会長は「北海道庁の導入した時のアセスメントを高く評価する」と述べた。また、前田副会長は「日本の経済社会全体を変えていくうえでは、税制のあり方を見直すことが不可決」、末松副会長が「多くの人材がさまざまな分野で、その意欲に応じ能力・個性を最大限に発揮できる環境づくりを」、北岡副会長が「地域の比較優位を活かして内外から企業が進出してくるような魅力ある地域づくりを」、古川副会長は「フロンティアスピリットあふれる北海道から新しい食・住・遊のあり方を発信してほしい」と訴え、豊田会長が「産業クラスターのような取り組みを心強く思った」と締め括った。


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