経団連くりっぷ No.61 (1997年 8月28日)

日本メキシコ経済委員会(委員長 川本信彦氏)/7月23日

ブランコ商工大臣よりメキシコ情勢を聞く


来日したメキシコのブランコ商務・工業振興大臣とゴンサレス・サダ メキシコ日本経済委員長を迎え、最近のメキシコ情勢ならびに日墨経済関係に関し意見交換を行なった。ブランコ大臣は、メキシコ経済の安定性を強調するとともに、マキラドーラ制度廃止後の具体的な対応策について説明した。以下はブランコ大臣とゴンサレス・サダ委員長のスピーチの概要である。

  1. ブランコ大臣スピーチ要旨
    1. 経済は安定性を回復
    2. メキシコ経済は、本年のインフレ率が目標の15%に近づき、GDP成長率も96年に5.1%に達するなど、予測以上に好調である。
      7月6日に実施された総選挙で、与党である制度的革命党(PRI)が下院の絶対多数を失い、メキシコ市長選や2州の知事選で敗退したにもかかわらず、金融市場の反応は冷静であった。これは、新しい民主的な選挙制度改革が好感をもって迎えられていることと、政治体制が変わっても従来の経済開放、規制緩和、民営化などの改革の方向に変化がないと受け止められていることを示している。今後、PRIは議会内で右派・左派を含めた他の政党と政策課題毎に連合を組みながら、こうした改革を続行していく。
      経済改革と民主化によりメキシコ経済の安定性が回復した結果、年初には国内外の投資家が各々総額70億ドルに上る投資計画を発表している。メキシコはさらに地理的優位性を高めるため、既存の自由貿易協定に加え、メルコスールとの部分的自由貿易協定、欧州連合との自由貿易協定の交渉を進めている。

    3. マキラドーラ制度の将来
    4. マキラドーラの関税払戻し制度は2001年までに廃止される。その後もマキラドーラ企業の競争力を維持するための措置として、メキシコ国内で生産可能な部品と不可能な部品をそれぞれリスト・アップし、前者については国内生産体制を整備し、後者については関税の撤廃または大幅引き下げを実施する方針である。日本の部品産業のメキシコへの進出を強く希望する。

  2. ゴンサレス・サダ委員長スピーチ要旨
  3. メキシコ経済の回復につれ海外からの信頼性も回復し、外国直接投資が増加している。産業別に見ると、特に機械・繊維を中心とする輸出製造業の伸びが大きい。労働力、製造システムなど質の面でも改善が見られる。
    7月6日の選挙は、明確かつ公正な手続に従って実施された点で評価できる。PRIが下院の絶対多数を失ったものの、現在の経済政策に後戻りはないと経済界は判断している。
    第21回日本メキシコ経済協議会は、メキシコ側参加者から高い評価を得た。これを両国経済関係の新たなスタートと位置づけ、双方にとって有益な関係を築いていきたい。


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