経団連くりっぷ No.61 (1997年 8月28日)

中東・アフリカ地域委員会(共同委員長 笠原幸雄氏)/7月25日

南アは、これからも着実に成長する
─デクラーク元南ア大統領との懇談会を開催


南アフリカ共和国は、94年の国民融和政権(マンデラ大統領)誕生以来、政治的にも経済的にもアフリカの新たな中心国として、順調に発展している。経団連では、94年と96年にミッションを派遣し、貿易・投資拡大の可能性を探ってきた。今般、デクラーク元大統領(国民党党首)が非公式に来日したことを機に南アの現状と展望につき話を聞いた。
以下はその要旨である。

  1. 対日関係
  2. 日本と南アの二国間関係は着実に深化しつつある。最近も大規模な自動車関連投資が続き、自動車製造能力が大幅に拡大した。日本企業の投資は、南アの官民双方から感謝されており、期待も高い。

  3. 政治情勢
  4. 政治的な焦点は、憲法制定から経済開発と成長維持に移った。野党たる国民党は、いまや非白人が党員の50%以上を占め、アフリカ民族会議(ANC)の一党独裁化を防ぐことを目標にしている。南アの政治を人種や民族でなく、政策に基づいた闘争に変えていく必要があるが、1999年の次回の総選挙以降に必ず実現すると確信している。ANCは、アパルトヘイト撤廃のために大同団結した政党で、元々は共産党などだった主義主張の異なる党員が混在している。アパルトヘイトが撤廃された今、目標を失ったANCの団結は緩みつつある。

  5. 社会経済政策
  6. 南アの経済情勢は良好で安定しているが、失業問題など障害も少なくない。今後とも社会経済的安定と繁栄を維持するためには、5%程度の成長率を維持する必要がある。そのために海外からの直接投資が必要である。近々為替管理が撤廃される。外資増大の誘因になることを期待している。
    政府は、現在労働界、経済界との間で、経済開発を優先するために、向こう5年から10年の間、賃上げと待遇改善をインフレ率未満に抑えることを検討している。マンデラ大統領が、労組に対して労働運動よりも経済成長を重視するよう呼びかけたことを評価したい。
    また、緊急な対策が必要な問題として、犯罪の取り締まり強化がある。また、アファーマティブ・アクション(黒人登用)の行き過ぎによる行政管理能力の急激な低下を防ぐ必要もある。性急にアファーマティブ・アクションを強行したため、新たなアパルトヘイトと、汚職がはびこる温床も生み出している。国民党は、とくにこれらの点につき、政府に注文をつけていくつもりである。

  7. アフリカの中の南ア
  8. アフリカにおける南アの役割は、次第に拡大していく。特に近隣のアフリカ諸国との貿易は急速に拡大しており、鉱業やエンジニアリング部門の協力も進んでいる。南アをとりまく環境は徐々に改善している。南アは、より魅力ある国に変貌しつつある。


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