経団連くりっぷ No.61 (1997年 8月28日)

タノン タイ蔵相との昼食懇談会(座長 瀬谷日タイ貿易経済委員長)/7月18日

通貨切下げでタイの輸出競争力は高まる


タイ政府は7月2日、それまでの実質的な米ドル・リンク制から管理変動相場制への移行を決定し、通貨バーツの実質的な切下げに踏み切った。この決定による影響と、タイ経済の現状について、来日したタノン タイ蔵相らと懇談した。

  1. タノン蔵相説明要旨
  2. タノン蔵相
    1. タイ経済は依然として健全である。政府は、歳出の削減により97年度以降も均衡予算を達成すべく努めている。昨年末時点でのタイの対外債務は898億ドル、うち公的部門の債務は166億ドルであった。つまり、対外債務の大部分を占めるのは民間部門の債務であり、現在のいわゆる金融不安は、民間に流入した膨大な短期資金が不動産投資などリスクの高い投機に回されたことが主な原因となっている。

    2. 政府は民間部門の債務返済を支援するため数々の政策を講じている。不動産部門では、不動産会社の債務を凍結する特別措置を講じている。現在371件、金額にして670億バーツの案件が不動産融資管理機構(PLMO)による審査待ちの状況にある。また、金融部門については、金融機関の再編を促すとともに外資出資比率の上限を緩和するといった内容の一連の緊急措置を6月24日に発表した。金融機関の抱える対不動産部門の債権を証券化するための特別措置も講じた。政府としては、金融機関の合併・統合を支援してこれを適正な数に減らすとともに、経営基盤を強化させたい。

    3. 管理変動相場制への移行により、短期的・投機的な資本流入による不当な為替変動はなくなる。当初は若干の混乱もあるだろうが、輸出競争力は高まり、タイへの投資は再び魅力あるものとなるだろう。国内金利の引下げも可能となる。なお、実質的な通貨切下げに伴うインフレや賃金の上昇は、適正水準に抑えるよう努める。現在の困難な時期は短期的なものであり、日本企業には対タイ投資の継続を望む。

  3. 意見交換
  4. 経団連側から、今回の措置で大きな影響を受ける企業への救済措置を講じてほしい等の意見が出された。
    これに対してタイ側からは、
    1. 状況に応じてさまざまな措置を講じる、
    2. タイ中央銀行によるリストラ・ローン供与を考えている、
    等の説明があった。


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