経団連くりっぷ No.61 (1997年 8月28日)
情報化部会(部会長 礒山隆夫氏)/7月15日
アイラ・マガジナー米国大統領上級顧問との懇談会
─民間主導による電子商取引の推進を
情報化部会では、クリントン大統領が7月1日に発表した「グローバルな電子商取引のための枠組み」のとりまとめの中心的役割を果たしたアイラ・マガジナー大統領上級顧問と懇談した。マガジナー氏は、電子商取引の発展のためには民間主導、市場原理の徹底が必要であり、政府の措置は簡素で必要最小限にすべきであると述べるとともに、非関税障壁の除去、インターネット市場の無関税化を主張した。
- マガジナー氏説明概要
- 電子商取引による新しい産業革命
- 電子商取引によって、200年前の産業革命と同様の世界経済の変革がもたらされる。今後四半世紀にわたり、電子商取引は経済成長の駆動力となりうる。
- 現在、世界でインターネットにアクセスしている人々は5,000万人いるが、2000年には2億人、2005年には10億人になると言われており、インターネットの活用により企業の発展が期待できる。
- ただし、電子商取引に関する法的環境が世界的に整備されておらず、また各国政府がインターネットに対して過剰な規制、過剰な課税を行なう心配があり、電子商取引の枠組みについて国際的な合意が必要である。
- 電子商取引推進のための5原則
電子商取引の円滑な発展のためには、
- 政府主導ではなく、民間主導であること、
- 政府規制ではなく、市場主導であること、
- 政府の関与が必要な場合でも、その措置は、できるだけ簡素で最小限に抑えること、
- 政府が対応する場合でも、分散型というインターネットのユニークな性質を遵守すること、
- グローバルな電子商取引に関して、国際的な枠組みを設けること、
が必要である。
- 電子商取引推進のための9つの勧告
- インターネットを利用した電子商取引に関する技術標準規格の決定については、民間が指導力を発揮することが望ましい。
- インターネット上のコンテンツに関して、政府が検閲することは誤りである。コンテンツの自主的選択が可能となるよう、民間がレイティングシステム(コンテンツの評価システム)やフィルタリングシステム(透かしシステム)を開発することが有効である。
- インターネット上のプライバシーを保護するためには、政府規制や立法措置ではなく、民間がプライバシー保護手法、商取引に関する行動規範などを確立すべきだ。
- 電子決済については、政府が規制すべきではなく、多様なスキームを利用者が選択できるようにすることが望ましい。
- インターネット市場の発展のため、各国が非関税障壁を設けることに反対する。
- 著作権、特許、商標権等の知的所有権を保護することが重要である。
- デジタル署名、契約成立など、電子商取引に関する共通の基盤を整備する必要がある。
- インターネット市場は、無関税とすべきである。
- 安全性を確保するため、電子商取引に関しては、高度の暗号技術を活用しなければならない。
- 民間の国際的連携
これからは、政府が民間を規制するのではなく、政府が民間に対して技術開発や商慣習作りを依頼していく時代である。
電子商取引を普及させるためには、民間経済団体の指導力が不可欠である。経団連をはじめ、日米欧の民間経済団体がプライバシーの保護、コンテンツの選択システムや電子決済システムの開発等に関する国際的な枠組みを構築するために連携してほしい。
- 懇談概要
- 経団連側:
- 不正・不法取引にはどのように対応していくつもりか。
- マガジナー氏:
- 取引内容の分散化・多様化を進めて、消費者が選択できるようにする。
例えば、一定基準を満たす企業には、それを証明するマークを表示できるようににするなどの方法が考えられる。
- 経団連側:
- インターネット回線に係る費用負担について、米国とその他の国との間で公平になるようにしてほしい。
- マガジナー氏:
- 米国がインターネットを開発したので、現在は米国が有利な立場にある。しかし、産業革命の後、英国が次第に他国に抜かれたようにグローバルな競争の中で米国のアドバンテージは早い段階で無くなるだろう。
- 経団連側:
- プライバシー保護やコンテンツの適正化のための規制は必要と考えるか。
- マガジナー氏:
- プライバシー保護、コンテンツ、技術基準、電子決済システム等に関して各国の民間経済団体が連携して、自主ルールを設定してほしい。民間がそうした努力を怠ると、政府が規制をすべきだという世論の圧力が強まるだろう。
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