経団連くりっぷ No.61 (1997年 8月28日)

女性の社会進出に関する部会(部会長 坂本春生氏)/7月31日

均等法等の改正をめぐる動きについて
太田芳枝労働省婦人局長と懇談


女性の社会進出に関する部会では、太田芳枝労働省婦人局長を招き、今回の男女雇用機会均等法等の具体的改正内容について説明を聞くとともに、種々懇談した。
太田局長の説明概要は以下の通りである。

  1. 男女雇用機会均等法改正の背景
  2. 1986年の均等法施行後、建前としては「女性を活用する」という認識も浸透し、それなりの効果もあった。しかし、バブル崩壊後、女子学生の就職が厳しくなり、各都道府県の婦人少年室には、募集・採用に関して均等法上問題があるケースが数多く持ち込まれた。一方、この10年間に欧米先進諸国では、性差別禁止の法律ができた国が多く、日本もこのままではいけない、という機運が盛り上がっていた。そこで、1995年秋より婦人少年問題審議会において均等法の改正についての検討を進めたが、なかなか進展しなかった。しかし、1996年6月に連合女性局が、雇用機会均等法を実効ある法律にしていくには、労働基準法の女子保護規定にこだわっていてはいけない、と決断したことが審議会の流れを大きく変えた。婦人少年問題審議会では1984年建議の原則である「企業の募集、採用から定年・退職・解雇に至る雇用管理における男女差別的取扱いを撤廃し、労働基準法の女子保護規定は、母性保護規定を除き解消すること」が法のあるべき姿であることを確認し、1996年12月に建議を取りまとめた。今回の建議は、公益側、使用者側、労働者側三者の意見が併記されるという形でなく、最終的に一致の建議となったことが画期的である。
    この建議に基づき、法案が作成され、6月11日に裁決、18日に交付された。

  3. 改正のポイント
  4. 事項改正法現行法
    1.男女雇用機会均等法

    差別の禁止募集・採用禁止努力義務
    配置・昇進禁止努力義務
    教育訓練禁止一部禁止
    福利厚生一部禁止一部禁止
    定年・退職・解雇禁止禁止
    女性のみ・女性優遇原則として禁止適法
    調停一方申請を可とする双方の同意が条件
    制裁企業名の公表(規定なし)
    ポジティブ・アクション国による援助(規定なし)
    セクシュアル・ハラスメント事業主の配慮義務(規定なし)
    母性健康管理義務化努力義務
    2.労働基準法

    女子の時間外・休日労働・深夜業規制を解消就業を規制
    多胎妊娠における産前休業期間14週間10週間
    3.育児・介護休業法

    深夜業 育児又は家族介護を行なう
    労働者の深夜業の制限
    (規定なし)
    〔労働省婦人局資料〕

  5. 国会審議の主要点
  6. 国会での審議の中で、女性が一番問題にしたのは、現在のように男性に対して3・6協定しかないような状況の下で男女共通としても良いのだろうかという点である。時間外労働について大臣告示の年間360時間という目安はあるものの、これだけではあまりに弱い、ということが指摘され、参議院では付帯決議が付けられた。付帯決議の主な点は以下の通り。

    労働大臣が国会において説明している通り、性差別禁止法が究極の目的であるが、現在日本の雇用管理においては女性差別が圧倒的に多いので、今回の均等法は女子差別禁止法になっている。特に、配置、昇進が禁止規定化したことで、各人の能力評価をきちんと行ない、性によらない雇用管理をすることが必要になってくる。
    つまり、企業の雇用管理を抜本的に変えていただかなければいけない。例えば、母性保護は重要であるということを総論では理解していても、各論になるといろいろ問題は残っている。総論と各論の差を何とか埋めないと、特殊出生率(1人の女性が一生の間に生む平均子供数)1.42人は回復していかない。そうなると長期的に一番困るのは企業ではないかと思う。
    今後、行政指導、指針などの内容を具体的に詰めていくが、最も重要なのは、女性を戦力として評価し、正当に処遇することである。


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