経団連くりっぷ No.79 (1998年5月28日)

アジア通貨・金融危機に関する特別検討会/4月21日

「アジア通貨・金融危機への対応策に関する基本的考え方」について理事会で報告


経団連では、東アジアの経済危機に対応するため、今年2月、アジア通貨・金融危機に関する特別検討会(座長:立石信雄アジア・大洋州地域委員会共同委員長)を設置し、アジア地域に進出する日本企業各社の現状と対応についてヒアリングを行なうとともに、政府機関関係者や内外の研究者との意見交換を重ねてきた。そこで4月21日の理事会において、立石共同委員長から、これまでの検討会での共通認識を整理した基本的考え方(下記)について報告を行なった。このような考え方に基づき、すでに検討会としては、3月13日の橋本総理のインドネシア訪問、3月19日のハビビ副大統領(当時)およびKADIN(インドネシア商工会議所連合)首脳との懇談会、3月26日のダウナー豪州外相の経団連訪問および4月25日の第3回アジア隣人会議などの際に関係方面に働きかけを行なっている。

  1. 日本の景気回復
  2. アジア通貨・金融危機克服に関し、我が国が果たしうる最も基本的役割は、一刻も早い国内景気の回復であり、それによって、アジア諸国からの輸入を増やすことである。さらに、規制緩和を推進し、輸入拡大を図る必要がある。
    経団連としても、我が国政府に対して思い切った景気回復策の実施を強く求めるとともに、自らも金融、流通などの生産性向上や企業経営の効率化に鋭意取組み、日本経済を再び活力あるものにするために全力を尽くす必要がある。

  3. 当該国による経済構造改革の迅速かつ着実な実施と我が国の協力
  4. 今回の危機克服の鍵は、当該国がIMFの提示するコンディショナリティーを念頭において、金融制度改革を含む経済構造改革を断行することである。
    我が国としては、当該国による構造改革が進むよう、失業者対策など構造改革に伴う苦痛を和らげるための協力を行うとともに、中長期的視点から人材育成や裾野産業の育成に協力していくことが重要である。

  5. アジアの更なる発展のための自由化推進路線の堅持と通貨の安定
  6. アジア諸国の潜在的成長力は依然として高い。それゆえに、ASEAN諸国が、APECの合意に反し国内産業優先の保護主義に走ることを深く憂慮する。ASEAN諸国が苦境を脱し、さらに発展していくためには、ASEAN諸国の結束を強化し、AICO(ASEAN産業協力計画)の拡大やAFTA(ASEAN自由貿易地域)の実現などに引き続き取組むことが肝要である。
    また、その前提としても、通貨の安定が重要である。我が国としては、円の国際化を通じて、決済通貨および外貨準備として円の役割を高めることも必要である。

以  上 


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