経団連くりっぷ No.79 (1998年5月28日)

日本イラン経済委員会(委員長 相川賢太郎氏)/5月15日

予想より早いイランの変化
−高村外務政務次官との懇談会を開催


昨年8月、ハタミ政権が誕生して以来、イランの対外政策は変化の兆しを見せつつある。日本との関係も、昨年11月、アミンザデ・イラン外務副大臣の来日、本年4月の高村(こうむら)外務政務次官のイラン訪問により、閣僚級対話再開に向けた気運が高まりつつある。そこで日本イラン経済委員会では、高村次官を招き、先のイラン訪問の成果につき話を聞くとともに種々懇談した。以下は高村次官の発言要旨である。

  1. イラン訪問の背景
  2. わが国は、伝統的にイランとの関係が深い。革命以前より、絶えることなく対話を続けてきた。しかし閣僚級のイラン訪問は、91年の中山外相以来途絶えており、昨年暮れ以来、訪問のタイミングを探ってきた。

  3. ローハニ国会副議長兼外交委員長
  4. テヘランでは、ハタミ大統領、ハラジ外相およびローハニ国会副議長兼外交委員長とお目にかかった。イランを世界的に孤立させないためにも、日本側の懸念事項、すなわちイランのテロ支援と大量破壊兵器保有の疑惑について率直に質した。ローハニ副議長からは、テロについては、許されることではないが、占領地の住民の反発はテロではないと思うとの説明があった。私が、一般大衆を巻き込めばテロであると反論したところ、そのとおりであると応えていた。大量破壊兵器については、中東を「大量破壊兵器禁止地帯」にする条約を締結してはどうかとのアイデアが述べられた。

  5. ハラジ外相
  6. ハラジ外相に対しては、小渕外相の日本への招請の意を伝え、また政治・文化・経済など多面にわたる両国間関係全体を緊密化させたいとの希望を伝えた。これに対しハラジ外相は、外相対話を年1回、次官級を年2回、局長級を年数回、定期的に行なってはどうかとわれわれよりも積極的な提案があった。

  7. ハタミ大統領
  8. ハラジ外相が有能な実務家であるとすれば、ハタミ大統領は、歴史哲学者といった雰囲気がある。大統領は、イランは革命期、戦争期、復興期を経て、現在安定期にある。安定期にあるイランは、国際社会と協調していくという含みのある発言をしていた。
    またハタミ大統領は、「米イ両国民間には敵意は存在しない。しかしアメリカは、イランに自らの考え方を押しつけることはできない。アメリカは行動によって、イラン側の不信感を払拭してほしい。それはアメリカのためにもなる」とのメッセージをアメリカに伝えてくれと依頼された。
    これに対し私は、「政府は国民の意思の下にあり、政府同士も仲良くする必要がある。日本は米イ両国と良好な関係を保っており、両国の和解は日本のためにもなる。いずれにしても、国際的孤立はよくない」と対米関係の改善方を促した。
    ハタミ大統領は、国民の70%に支持されており、改革政策に対して保守派も対抗はできない。はずみがつけば、イラン社会は、すごい勢いで変わりそうだとの印象を得た。懸念要因としては、石油価格の下落がある。石油に外貨収入を依存しているイランにとって、石油価格の下落は経済の停滞を意味する。経済の停滞は、国民の支持の減少と、保守派の巻き返しをもたらす可能性が高い。

  9. わが国政府の対応
  10. 日本としては、国民の圧倒的な支持を得ているハタミ政権を支持したいと考えているが、国際的な情勢を踏まえつつ対応していくつもりである。
    今のところ、円借款の供与については「慎重に対応」しており、また中長期貿易保険の再開については、「真剣に対応」していきたいと考えている。


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