経団連くりっぷ No.79 (1998年5月28日)

日本カナダ経済委員会(委員長 江尻宏一郎氏)/5月12日

今こそ、日加経済関係強化の時


日本カナダ経済委員会では、5月18日〜19日に軽井沢において開催される日加経済人会議の打合会・結団式を開催した。打合会では、外務省の小澤北米局参事官より「カナダの政治情勢と日加関係について」、通産省の西山米州課総括班長より「カナダの経済情勢・日加経済関係」について説明を聞いた。続いて結団式では、エドワーズ駐日カナダ大使から日加関係の展望等について説明があった。

  1. カナダの政治情勢について
    〔外務省 小澤北米局参事官〕
    1. クレティエン政権(1993年〜)は、財政赤字削減を政策の第一の柱とし、連邦公務員の削減、企業や農業関係の補助金の削減など大幅な歳出削減に取り組んできた。その結果、98年度予算において単年度としては27年ぶりに均衡予算を成立することができた。同政権は、インフレ抑制政策および為替市場の秩序維持などにも積極的に取り組んでいる。

    2. 1997年6月の総選挙では、クレティエン首相率いる自由党が議席を減らしながらも過半数を獲得し、引き続き政権を維持することになった。

    3. 外交面では、カナダの対米依存度を低下させるべく、アジア・太平洋、欧州、中南米諸国との関係拡大を図っている。APECの議長国を務めた97年には、「アジア太平洋の年」として、わが国をはじめとするアジア太平洋諸国との関係強化を図る姿勢を示した。米国との通商問題は、マルチの枠組みを使った解決方法を重視している。

    4. 日加関係については、大きな懸念もなく順調に進展している。97年11月の首脳会談では、安全保障、経済、青年交流の分野における日加協力を謳った「21世紀に向けた日加関係の強化」が発表された。

    5. 対日貿易については、高付加価値製品の対日輸出拡大を目的とする「アクション・プラン」を毎年発表している。97/98年度版では、建築用材、農水産製品、観光、情報関連技術、消費財、医療機器の6分野が取り上げられている。

  2. カナダの経済情勢・日加経済関係
    〔通産省 西山米州課総括班長〕
    1. カナダ経済は好調に推移している。低金利政策による民間消費、設備投資の好調な伸びと雇用の改善により内需が拡大し、97年の経済成長率は3.8%となった。

    2. 輸入の急増により貿易収支は前年に比べ半減し、234億カナダドルとなった。97年は、輸出の81%、輸入の78%を米国が占め、対米依存度は、10年前と比較しても増加している。日本を除く対アジア、対欧州、対中南米の貿易収支は赤字である。品目別に見ると、輸出では、林産品、エネルギー、農水産品などの一次産品と機械機器、自動車・同部品などの加工品がそれぞれ5割近くを占めている。輸入では、加工品が7割を占める。

    3. 97年は、日本の内需不振のため輸入が3%減の98億米ドルとなったものの、日加貿易は、日本の輸入超過が続いている。日本にとってカナダは、97年の輸出で第15位、輸入で第11位である。カナダにとって日本は輸出入ともに米国に次ぐ第2位の貿易相手国である。

    4. 96年度の対加直接投資は、輸送機械(自動車)、木材・パルプ等で大型案件があったため、対前年比2倍の1, 144億ドルとなった。対日直接投資も金融・保険分野を中心に、対前年比3倍の55億円を記録した。しかし、97年度は日本からの対加直接投資、カナダからの対日直接投資ともに激減した。

    5. 日加間の経済課題としては、日本の現地進出企業が関税面において差別的扱いを受けている米加オートパクト協定がある。現在、カナダ政府は、関税問題を含め、自動車政策全般の見直しを実施しており、本年6月に閣議決定が行なわれることになっている。

    6. 新たな動きとしては、第三国市場における日加協力がある。96年11月のクレティエン首相訪日時にアジアなど第三国市場における日加企業の協力について合意がなされたが、それを受け、97年11月には貿易保険協調のスキームにつき通産省とカナダ輸出開発公社との間で合意が結ばれた。

    7. 日本の規制緩和に対する関心も高い。規制緩和計画の見直し・策定に際しては、98年4月に、規格・基準制度、農産物、建材・住宅、電気通信などの個別分野の要望書が日本政府に提出された。

  3. 日加関係の展望
    〔エドワーズ駐日カナダ大使〕
    1. 本年1月に着任して、日本カナダ経済人会議に参加できることを光栄に思う。同会議は、より強固な、そしてダイナミックな日加関係を実現するうえで、常に重要な役割を果たしてきたと認識している。

    2. アジアの経済危機を多少受けたにもかかわらず、カナダ経済は好調に推移している。OECDとIMFは1998年のカナダの経済成長率をG7で第1位と予測している。政府の一連の経済改革と民間企業の努力により、カナダ経済はダイナミックな変化を遂げることができた。日本も官民が一体となって経済構造改革に取り組んでいくことを望んでいる。

    3. カナダは、日本をはじめとするアジア諸国の動向に強い関心を寄せている。アジアの金融・通貨危機に際しては、韓国とタイへのIMF支援パッケージに参加した。インドネシアには、経済再建を支援するために政府高官のミッションを派遣したところである。アジア経済の低迷の余波は、対アジア輸出や観光客の減少など、カナダ経済にも及んでいる。このような折、日本カナダ経済人会議が日本の経済改革への取組みやアジアの情勢についてフランクな意見交換の場を提供することは、大変重要である。現状が厳しい今こそ、長年にわたって両国が築いてきた関係をさらに強固なものにするチャンスと捉えるべきだ。


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