第13回東富士フォーラム/7月23~25日
第13回東富士フォーラムには会長・副会長、評議員会議長・副議長、委員長の総勢24名が参加し、樋口副会長を議長として「景気の本格的な回復に真に有効な対策」「アジア経済・金融危機に対する日本の役割」「中長期的な経済・社会構造改革の進め方」について活発な討議を行ない、2つの緊急提言を発表した。また田中直毅 21世紀政策研究所理事長および関志雄 野村総合研究所主任研究員の講演を聞いた。
投資や生産の著しい落ち込みに対して即効性のある措置は、マネタリーベース(中央銀行の負債)の持続的拡大である。これはインターバンク市場の資金を潤沢にし、追加的貸出金利を低下させ、受注、投資を増加させる。
マネタリーベースの拡大がインフレにはつながらないことは、米国の事例から明らかである。ただし、海外に資金が逃げて大幅な円安にならないよう、金融システム不安の回避が不可欠である。
アジアの景気はドルより円レートによって大きな影響を受ける。円安がアジア経済危機の大きな原因であり、円高が即効性のあるアジア経済回復策である(1%の円高でアジアの経済成長は0.1%増)。また、各国の為替レート決定にあたって通貨バスケットの中の円の比重を高めることが、アジア経済の安定に寄与する。
アジアの繁栄と安定が日本にとって有益であり、日本は内需刺激と円安是正を進める必要がある。円の国際化については、日本の対外資産価値の維持という観点からもメリットが大きい。
不良債権問題の本格的解決と金融機能の回復が重要であり、すでに打ち出されている施策の早期実行、金融再生トータルプラン関連法案の早期成立が必要である。
また、金融システムの安定化・機能回復には、金融機関の再編成、自助努力による競争力強化が不可欠である。
金融問題への対応とともに、税制、地価・株価対策などの実体経済に対する政策も必要である。個人消費を刺激する税制、大都市への公共投資の集中、思い切った住宅減税、規制緩和などを実行すべきである。
さらに、失業対策や年金問題の解決など、将来への不安を取り除く対策が必要である。
アジアの潜在成長力は依然として高い。アジアから撤退を考えている企業は少なく、現地調達率の向上、輸出志向で対応している。
金融危機を引き起こさないよう、短期資金流入の抑制、総合サーベイランス体制、安定化基金などについて検討すべきである。また、IMFの支援体制の弾力化も必要である。
アジア諸国に対する裾野産業育成、人材育成、環境対策などへの支援が必要であり、また、留学生の増加策や外国人労働者の受け入れ策について検討すべきである。
少子・高齢化への対応と社会保障制度改革が今後の重要課題である。当面の課題である公的年金制度改革については、基礎年金部分と報酬比例部分に明確に分離し、それぞれ賦課、積立て方式に移行するとともに、給付水準の見直しが必要である。
少子化対策については、安心して子どもが産める職場対策の検討をするとともに、子どもの増加が家計支出増になることから景気対策の観点からも検討を行なう必要がある。
企業活力発揮のための環境整備については、まず行革・規制緩和等の構造改革が必要不可欠である。構造改革にあたってはグローバルスタンダードを基本とすべきである。
政府のスリム化を進めるためには公共投資の配分の見直しが不可欠であり、21世紀に必要なもの、経済効果の高いものに思い切ってシフトすべきである。
科学技術の振興による技術開発力の向上、国際競争力の強化をはかるとともに、大学、国立研究機関の活性化や知的財産権の有効活用が必要である。また、環境分野を重視した公共投資や原子力発電を推進すべきである。
本フォーラムでの討議の結果、23日に「金融システム安定化のための諸制度の整備を求める-金融の再編・強化、ディスクロージャーの推進、金融当局の役割・責任分担の明確化、ブリッジバンク関連法制の整備-」をとりまとめ、
また24日には「自民党小渕新総裁に望む」をとりまとめ、