経団連くりっぷ No.96 (1999年2月25日)

宇宙開発利用推進会議 企画部会(部会長 鈴木敏夫氏)/1月27日

情報収集衛星の導入の経緯と今後のスケジュール等について


最近のわが国をめぐる国内外の厳しい情勢に鑑み、わが国として安全保障上の情報等を独自に収集することを目的として、12月に情報収集衛星の導入が閣議決定された。そこで、宇宙開発利用推進会議企画部会では、関係者を招き、情報収集衛星の導入の経緯、概要および今後のスケジュール等について説明を聞くとともに議論した。

  1. 情報収集衛星の導入経緯
  2. テポドン発射事件以降、わが国の安全保障、危機管理をめぐる議論が高まり、自民党においても、「情報衛星に関するプロジェクトチーム」が設置され、米国の事情を調査するため、訪米団を昨秋2回にわたって派遣するなど積極的な検討が行なわれた。
    政府としてもその対応を検討してきたが、昨年11月、野中官房長官が情報収集衛星を導入する方針で取り組む旨を閣議で発言した。それを受けて、政府諮問機関である宇宙開発委員会が情報収集衛星の研究着手を承認した後、平成10年度第三次補正予算において同衛星に関する研究を行なうため、約17億円の予算が計上された。
    さらに、12月、情報収集衛星の導入に関して閣議決定がなされ、平成11年度政府予算案に、同衛星の研究費として、約113億円が盛り込まれることとなった。

  3. 情報収集衛星の概要
  4. 情報収集衛星は、高度約400〜600kmの軌道に配置される、光学衛星と合成開口レーダ衛星の各々2機ずつによって構成される。合計4機の衛星によって、外交・防衛等安全保障、大規模災害等への対応のために必要な情報を収集することを主な目的としている。
    ちなみに、わが国の地球観測衛星関連の技術開発については、1987年に海洋観測衛星、1992年に地球資源衛星、1996年に地球観測プラットフォーム技術衛星を打ち上げ、現在、2002年度打上げを目指して陸域観測技術衛星を開発中である。今後の情報収集衛星の研究開発に関しては、これらの技術を最大限活用していく予定である。

  5. 情報収集衛星の今後のスケジュール
  6. 今年度および来年度の研究開発においては、内閣官房内閣情報調査室が地上系をはじめとした衛星システムの概念設計等に取り組むとともに、衛星本体の開発については、科学技術庁と宇宙開発事業団の他、通産省が合成開口レーダ、郵政省がデータ伝送系を担当することとなっている。
    今後、概念設計、試作試験、開発を経て、2002年度を目途に、H-IIAロケットにより順次打ち上げる計画であるが、2000年度以降の詳細な研究開発体制については、システム全体の運用体制とあわせて、今後、政府内で検討を重ねていく必要がある。


くりっぷ No.96 目次日本語のホームページ