第52回九州・山口経済懇談会/3月14日
経団連と九州・山口経済連合会(九経連)は、標記懇談会を福岡において開催した。地元経済人約220名の参加のもと、経団連側は今井会長、古川・辻・前田副会長、若原1%クラブ会長が出席し、九経連首脳と最近の経済動向や九州の活性化策等について懇談した。
当地域の経済に差しつつある光明を確実にするため、中小・ベンチャー企業振興や雇用対策、インフラ整備など景気回復に向けた諸施策の着実な実施が望まれる。
域内の連携・交流を図る上で、九州新幹線等の高速交通基盤や情報インフラの整備による地域連携の推進が必要である。
また、活力ある自立的経済圏を形成するためには、資源循環型の社会構築に向けた資源リサイクルや産業廃棄物処理の方策の検討をはじめ、新産業・ベンチャー企業等、地域産業の育成が重要である。
さらに、アジア諸国等との国際交流の推進と国際交流拠点の整備を図る必要がある。
九州・山口では、景気回復は来年以降と考える企業が過半数であり、今後、
昨年の地方分権一括法成立、本年4月の同法施行に伴い、国・地方の関係が従来の上下から対等へと変わり、地方分権が実施の段階に移るものと期待される。
九経連では地方分権、行財政改革を検討し、1995年公表の「2020年に向けた九州地域の戦略」で、市町村の強化と権限委譲、広域行政の確立(道州制)等を提言した。
また福岡市では、市民の立場から地方分権を考え、その実現に取り組む全国初の市民組織「分権型社会をめざす市民の会」を通じて、分権意識の啓蒙に注力している。
一方、当地域が自立的経済を構築するためには、社会資本整備が不可欠であるが、その効率性・透明性を確保すべく、PFI等の事業手法も積極的に検討したい。
北九州ではエコタウン事業を中心に先導的な環境ビジネスが展開され、公害防止や環境リサイクル等に多くの実績を残している。また、昨年11月には、産学官連携の「九州地域環境・リサイクル産業交流プラザ」が設立され、環境リサイクル産業の育成・振興に向けた取組みが活発化している。
当地域では、事業化に直結する特許出願件数が対全国比1.4%と低く、研究機関等が保有する知的資源を活かし、地域産業の振興につなげることがますます重要となろう。
九州を訪れる外国人の約9割はアジア人が占めているが、アジア通貨危機の影響により観光客が激減するなど、九州観光は極めて厳しい状況に置かれている。
九州観光の低迷は、多くの魅力ある観光資源を有効にPRできておらず、九州全体としての取組みが不十分であること等が要因である。九経連では「九州観光再生への戦略」を取りまとめ、九州観光活性化のための戦略課題について検討している。
21世紀の大観光交流時代において、アジアをはじめ外国の観光客誘致は九州の観光産業を育成する上で重要である。
九州・沖縄サミットについて
嶺井政治 副会長(沖縄電力会長)
九経連では、サミット開催は当地域を世界にPRする好機と捉え、蔵相会合を開催する福岡県、外相会合を開催する宮崎県ともども即応体制を整えている。
沖縄県では、首脳会合会議場となる万国津梁館やプレスセンターの建設等を急ピッチで進めている。1999年の来沖観光客が過去最高の456万人を記録するなどサミット決定が沖縄経済に追い風となっている。今後、沖縄の魅力を国内外に周知することにより観光客の更なる増加を期待している。
九州国立博物館(仮称)について
吉田清治 副会長・専務理事(九州電力顧問)
昨年3月に福岡県太宰府市への設置が決定した九州国立博物館(仮称)は、4月より建築実施設計が予定されるなど着実に進捗しており、「アジアとの文化交流の歴史」をテーマに、国と地域の連携のもと建設・運営されることになっている。
建設・運営を国、福岡県、九州国立博物館設置促進財団の三者が分担することで、民間の力が大きく作用することが特徴である。財団では建設・運営資金の確保に向け、各方面からの募金参加を呼びかけている。
前田副会長から税制改革・社会保障をめぐる動向について、若原1%クラブ会長より経団連の社会貢献活動について、辻副会長より最近の環境問題について、古川副会長より広域観光戦略と九州地域の活性化について、各々説明がなされた。
最後に今井会長より、九州・山口地域の取組みに対して経団連は可能な限り応援を続けていくとして、締め括った。