経団連くりっぷ No.129 (2000年7月27日)

社会貢献推進委員会(委員長 武田國男氏)/7月6日

NGOとの連携は不可欠

−国際社会における「市民社会(シビル・ソサエティ)」の役割


九州・沖縄サミットを機に、NGOに対する関心が高まっている。そこで当委員会では、世界各国のNGOともネットワークを持つ(財)日本国際交流センターの山本正理事長より国際社会におけるNGOの現状と役割について説明をきくとともに意見交換を行なった。その後、「変化する企業と社会貢献」懇談会の島田京子座長、「社会基盤整備」懇談会の加藤種男共同座長が、それぞれの懇談会の活動状況を報告した。

○ 山本理事長説明要旨

  1. シビル・ソサエティ台頭の背景
  2. 近年、民(シビル)の観点に立ちながら、公共の利益の増進のための活動を行なう組織を「市民社会(シビル・ソサエティ)」と呼ぶことが増えてきており、NGO、NPOの民間非営利組織の他に、民間政策研究機関、民間財団等を含め、シビル・ソサエティ・オーガニゼーション(CSO)と呼んでいる。
    グローバリゼーション・民主化が進展する近年の国際社会での社会的ニーズの多様化、複雑化に国・行政が十分に対応できないこと、冷戦終焉後の脅威が貧困、失業、環境破壊、麻薬等の「人間の安全保障(ヒューマン・セキュリティ)」に移行し、国よりもCSOの役割が増大していること、通信技術の目覚しい進展、国連・国際機関の新たな支持基盤等によりシビル・ソサエティが台頭することとなった。

  3. シビル・ソサエティの比較優位性
  4. シビル・ソサエティが期待混じりの関心を集める理由は、行政や企業セクターにはない比較優位性を持つことによる。シビル・ソサエティは自らのミッションに基づき、課題多き社会の現状を変革すべく、専門性を持って柔軟かつ迅速に行動する。アジア経済危機時におけるコミュニティ・レベルでの社会基盤維持や対人地雷撤去などでの活動がその一例である。また、「人間の安全保障」では、国境にとらわれず個人の生活により近い立場からアプローチするシビル・ソサエティに対する期待は大きい。

  5. 課題と今後の展望
  6. シビル・ソサエティが存在感を増す一方、新たな問題も出てきている。1999年末シアトルで、抗議デモによりWTO閣僚会議の審議を妨害したことはよく知られている。誰が市民を代表するのかという正当性が問われる一方で、単一の課題追求のみや説明責任も果たせず独善的な正当性の主張のみを行なうシビル・ソサエティも、中には存在する。財政基盤を強化し行政や企業からの主体性を保つことも課題である。
    しかし、シビル・ソサエティの台頭は止められない。今後は、国、国際機関、企業、シビル・ソサエティの各セクターが対話を重ね、相互の役割や有用性を認め合った上で、パートナーシップを築き、国際社会の新たな課題に取り組む必要がある。


くりっぷ No.129 目次日本語のホームページ