経団連くりっぷ No.133 (2000年10月12日)
経団連意見書/9月19日
「中期防衛力整備計画」は、わが国の防衛力のあり方やその具体的な整備目標を定めるものとして5年ごとに策定されており、現在の中期防衛力整備計画は今年度が最終年度となる。現在、防衛庁は来年度から5年間の「次期中期防衛力整備計画」の検討を進めている。そこで、防衛生産委員会(委員長:増田信行氏)では、防衛生産・技術基盤の維持・向上の観点から、次期防策定に向けた考え方を提示すべく、標記提言をとりまとめ、9月19日の理事会の承認を得て、政府・与党等関係方面に建議した。以下はその概要である。
- 防衛産業をめぐる環境の変化
安全保障環境の変化に対応した防衛力整備
- 現中期防衛力整備計画策定後、正規戦争以外の危機が顕在化
- 米国ではIT分野の技術革新等の活用が進む
- わが国でも、
- ITを活用した統合された情報共有基盤の構築、
- 弾道ミサイルに対する防衛対処能力、
- 国際平和協力対処能力、
- 緊急時の即応対処能力、
等への取り組みが想定される
重要性を増す国産開発による防衛技術基盤
- わが国の防衛産業は、運用上の要求があり、適切な投資がなされれば、必要とする装備品を国産開発できる十分な能力を保持
- 諸外国からの核心部分、最先端の防衛技術の入手は困難
- 技術基盤維持は、
- 安全保障上の潜在的抑止力、
- 諸外国から高度な技術提供を受けるためのギブ・アンド・テイクの関係の構築、
- 装備輸入の際のバーゲニングパワーの強化、
の点からも重要
- したがって、国産装備の開発による防衛技術基盤の重要性が増大
装備調達の減少と取得改革・調達改革
- 現中期防の正面装備調達は、前々中期防に比べ約30%の減
- 企業の負担増(コスト低減目標の実施、歳出化経費の繰り延べ)
- 各社は合理化や民需展開により生産基盤を維持
- 今後、調達側でも企業努力の反映される調達制度の整備等が必要
国際的な防衛産業の統合と国際的提携
- 今後、防衛装備品の国際的な共同研究や開発の増加が予想される
- わが国防衛関連企業も米国企業等との提携や共同開発等を視野に入れる必要
- 次期中期防衛力整備計画の課題
重点的に国産化すべき防衛装備・技術の明確化と研究開発費の増額
- 防衛技術基盤の重点的強化の必要性を明記
- 重点的に国産化すべき防衛装備・技術の方向性を明示
- 新装備構想によるプロジェクトの立ち上げと研究開発予算の拡充
技術基盤強化に資するプロジェクトの推進
- ITによる情報共有基盤の構築
- 緊急時の即応対処能力
- 情報収集機能と情報セキュリティの強化
- 陸海空の防衛力統合運用
- 安全保障上重要な大型のシステム開発への重点的取組み
- 基盤的防衛力の整備に資する大型のシステム開発
- 弾道ミサイル等の新たな脅威に対する防衛対処能力の整備
- 技術実証プロジェクトの推進
生産基盤の維持と企業努力が反映される取得・調達改革の推進
- 生産基盤の維持
- 防衛装備品の特殊性等に配慮し、安定的調達を行なうべき
- 取得・調達改革等
- 官側における装備品の性能要求や仕様の見直しの主体的推進
- 契約関連業務の簡素化、実効あるインセンティブ制度運用、歳出化経費の繰り延べの早期解消等
国際的提携のための環境整備
- 輸出管理政策、知的所有権の保護等に関して、共同研究開発・生産を円滑にできる環境の整備
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