経団連くりっぷ No.144 (2001年3月22日)

なびげーたー

グローバリゼーションの下での日欧関係

国際経済本部長 久保田政一


日EUビジネス・ダイアログ・ラウンドテーブルでの議論を紹介しつつ今後の日欧経済関係について考えてみたい。

  1. さる3月2日、ブラッセルにて開催された日EUビジネス・ダイアログ・ラウンドテーブル中間会議に参加した。当日は、関本(日本電気相談役)、ダビニヨン(ソシエテ・ジェネラル・ド・ベルジック会長)両議長の開会挨拶に続いて,日欧両国政府(外務省、経済産業省、欧州委員会)から経済構造改革、IT化への対応等の重要政策課題についての説明があった。その後、(1)貿易・投資、(2)会計・税、(3)標準、(4)相互承認、(5)電子商取引、(6)WTO、の分科会ごとに日欧経済界より、両国政府に対し、改善事項を要望し、政府がこれに答えるという形で進められた。日本の経済界からは、企業活動のグローバル化に対応して、欧州ワイドでの会社法や税の整備、会計基準・規格・基準の国際的ハーモナイゼーション、相互承認等を求めるとともに、WTO新ラウンドの立ち上げに向けて日欧の連携強化を提言した(また、欧州サイドからも日本市場の透明性の向上、競争の促進をはじめ上記のハーモナイゼーションを要望)。

  2. このように、日欧のダイアログは過去における通商摩擦といった水際から国内の問題に重点がシフトしつつある。また、政府は、経済界の要望をうけて自国の経済構造改革を積極的に推進していこうという態度に変化しつつある。これはとりもなおさず企業のグローバル化が進展し、市場・制度・規格・基準・認証の統一化、ハーモナイゼーションを求める経済界と、企業が国を選ぶ時代にあって、広義のビジネス・インフラを整備しなければ、経済を活性化することができないという政府のインタレストが一致していることが背景にある。

  3. 日欧は、米国とともに、世界経済の発展・マネージメントに大きな責任を有し、自由貿易推進の旗振り役を求められている。その意味において包括的な新ラウンドの立ち上げに共通の利益を有する日欧は、米国や発展途上国が交渉のテーブルにつくようにこれまで以上に強く働きかけていかなければならない。

  4. グローバリゼーションというものが「よりよい人生を求める人間の基本的欲求」に根ざすものであり、先進国も途上国もこれに「適応」せざるを得ない時代(「レクサスとオリーブの木」)にあって、このような日欧の官民が相互の経済改革を推進しようとするこの会議は、まだ始まったばかりとはいえ、画期的なものといえよう。

  5. 欧米の官民の間で既に開催されているトランス・アトランティック・ビジネスダイアログにならったこの会議の今後の動向が注目されるとともに、「健全なグローバリゼーションの推進」を使命とする経団連としてもいかなる貢献ができるのかについて検討していく必要があろう。


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