経団連くりっぷ No.145 (2001年4月12日)

国土・住宅政策委員会(共同委員長 今村治輔氏)/3月12日

PFI方式による社会資本整備はもはや世界の潮流


現在、地方自治体を中心にPFI事業に係る検討が活発化している。なかでも東京都は、昨年、PFI事業の実質的な第1号案件を立ち上げるとともに、PFI基本方針のとりまとめも行っている。そこで、東京都の青山副知事から、東京都におけるPFI事業の取組みについて、説明をきくとともに意見交換を行った。また、当日は、日本PFI協会の植田和男専務理事から、PFI事業の現状と課題について、説明をきくとともに意見交換した。

  1. 青山副知事説明要旨
    1. 首都再生緊急プロジェクト
    2. 3月9日に政府から緊急経済対策が公表されたことを受け、東京都では、首都再生緊急プロジェクトを急遽とりまとめ、先日自民党へ提出した。主な内容は、

      1. 羽田の再拡張と国際化の推進、首都圏における交通渋滞解消施策の推進、
      2. 首都圏の電子化(超高速情報ネットワーク構築)、
      3. 大気汚染対策、
      の3点である。本プロジェクトは、7都県市(東京・神奈川・千葉・埼玉と3政令指定都市)共同のプロジェクトであり、今後5年間に渡り、10兆円の国費を投入して賄う事業である。東京都では、首都圏をはじめ、都市の街づくり対策事業の強化こそが、低迷するわが国経済の本格的な建て直しに有効な手段と考えおり、今後これらの都市事業にPFI方式を活用していく。

    3. 21世紀の社会資本整備のあり方
    4. 戦後わが国は、都市より地方に対する公共投資を重視してきたため、現在、都市の社会資本整備の状況は地方に比べ著しく遅れている。例えば、全国の高速道路網は、その計画の7割が完成し、2015年には全線の開通が予定されている。しかし、東京都の都市計画道路は、現在のペースでは、2015年になっても計画の半分しか完成しない。また、東京都の都市計画道路は、他の大都市の中で最も遅い時期に完成する。将来、高速道路網の整備が完了し、全国から東京都に車両での乗り入れが可能になっても、都心に流入した車は、未整備な都心環状線の中で現在よりひどい交通渋滞に巻き込まれかねない。従って、圏央道、外環、中央環状線の早期完成が急がれる。また、首都圏で他に必要とされるインフラは、羽田空港の再拡張、羽田〜成田間の交通アクセス整備、都内各所の交通結節点整備、木造密集地帯の再開発・建替事業等がある。21世紀の東京とわが国経済の活性化のため、これらの社会インフラは早急に整備すべきである。

  2. 日本PFI協会植田専務理事説明要旨
    1. PFI事業の現状
    2. 昨年、南アフリカのケープタウンにて、世界各国の代表者が、自国のPFI事業の現状を発表し意見交換する機会があった(今年は英国ダブリンにて開催予定)。世界では、もはや公共事業をPFI方式によって実施することが潮流となっている。
      わが国でも、現在100を超える地方自治体がPFI事業の調査を行っており、各自治体は、かなり前向きな姿勢でPFIに取り組んでいる。昨年10月には、日本初のPFI事業である東京都金町浄水場常用発電事業が稼動し、PFI推進法制定以来、16事業が、PFI実施方針を公表している。この方針のなかには、小学校(調布市立調和小学校)や病院(高知市新病院)の整備・運営・維持管理事業の実施方針も含まれており、調和小学校案件は、初めて国の補助金が投入されたPFI事業として注目に値する。わが国において、今後もこの勢いでPFIが普及すると、官民両方に対し適切な指導ができる建設コンサルタントの質と量の両面において不足が生じる恐れがある。
      国内外を問わずPFI事業が評価されている理由に、一つの公共事業を設計から運営まで、一体的、一元的に捉える考え方がある。従来型の公共工事では、設計、建設、維持・管理、運営の各事業で契約が必要となり、コストも事業ごとに算定していた。しかし、PFI方式では、契約は、事業全体を捉えたPFI事業契約書としてまとめられ、将来発生しうるリスクの認識とその分担まで明確に規定した中身となる。さらにコストは、事業期間全体を捉えたライフサイクルコストとして算定される。
      建設省所管公共施設に関する維持投資額・更新投資額のグラフ(出典:平成12年度建設白書)によると、今後25年間は、総投資額のうち、維持・更新投資額の占める割合が高まっていくと推定されている。行政の財政負担軽減のため、公共施設の新規投資は、PFI方式を採用して実施していくことが今後ますます重要になっていく。

    3. PFI事業の課題
    4. 地方自治法ならびに先日公表されたPFI事業実施プロセスに関するガイドラインによると、PFI事業に係る入札方法は、会計法上の(総合評価)一般競争入札が唯一の方法である。しかし、一般競争入札は、公共工事等の通常の公共事業を念頭においた手続きであり、PFIの調達手続きとしては種々問題点がある。一般競争入札によると、資格審査段階では「絞込み」ができないため、応募者のコスト負担が大きくなるおそれがある。さらに、落札者決定後、契約内容の変更が不可能であり、交渉を経た上での契約締結ができず、適切なリスク分担が出来ない。また、税制面の課題もある。
      PFI推進法ならびに基本方針の中でも明記されているが、PFI事業を進めるにあたり、民間事業の技術の活用および創意工夫の十分な発揮を妨げるような規制は、速やかに撤廃または緩和すべきである。

  3. 意見交換(要旨)
  4. 経団連側:
    今後、東京都は、金町浄水場で実施したような発電事業をメインにPFI方式を採用していくのか。
    東京都側:
    社会資本整備全般にPFIを活用していくが、当面、南青山団地建替事業などの街づくりや都市の事業をPFI方式で行っていく。

    経団連側:
    PFI事業の実施に際し、一般競争入札や税制面での諸課題があるが、今後の見通しはどうか。
    日本PFI協会側:
    入札制度については、内閣府や政府のPFI推進委員会で日々議論を重ねている。税制については、まだ明確な方向性が出ていない。

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