経団連くりっぷ No.160 (2001年12月13日)

日韓産業協力の新たな発展に向けて


貿易自由化をめぐる世界の情勢が変化する中、わが国においても、自由貿易協定(FTA)を締結する機運が高まってきている。

韓国との間についても、1998年、2000年の二度にわたる金大中大統領の訪日を契機に、FTAの可能性に関する議論が始まっている。

経団連としては、今後も日韓の産業協力を一層進展させることが必要であり、FTAがそのための有効な手段となりうるとの認識から、関税撤廃に止まらない、より包括的な内容を盛り込んだFTAを日韓間で早急に締結すべきであると考える。


  • 日韓両国は東アジアの先進国として、アジア経済の今後の発展を牽引する重要なパートナー。
    今後さらに産業協力を発展させるべき。
  • FTAは日韓の産業協力を加速させ、両国経済や両国経済関係を活性化させる有効な手段。
    日韓FTAは広範な経済連携を目指す包括的なものとすべき。
  • 日韓FTAは、未来を志向する日韓関係全般にとって意義あり。21世紀の両国関係の象徴としても早期に締結すべき。
1.日韓産業協力の現状と今後の可能性

(1) 現状

  • 相互依存・戦略的提携が進展(電機・電子・通信、精密機器、自動車、鉄鋼等)
  • 韓国のビジネス環境は改善傾向
  • 労働問題は依然大きな阻害要因

(2) 今後の可能性

  • 主要分野で多様な協力が可能(特に、電機・電子・通信、鉄鋼)
  • 双方市場で新たな協力関係構築の動き(自動車やAV製品で現地法人設立、韓国企業の対日進出)
  • 日韓中三国協力も想定(セメント)

2.日韓FTAのあり方

(1) 貿易自由化をめぐる情勢

  • 世界的な地域経済統合の動き、FTA締結数の増大
  • わが国でもシンガポール、メキシコとの間でFTAに向けた動き
  • 中国のプレゼンスの高まり
  • ASEAN+3、東アジアの自由貿易圏など域内の協調を目指す動き

(2) 日韓産業協力とFTA

  • FTAは産業協力推進のための効果的手段(企業が克服できない制度的障壁の解決を期待)

(3) 包括的なFTAの必要性

  • 日本企業は、関税引き下げメリットに加え、両国の制度改革による産業競争力の強化をFTAに期待
  • 日韓FTAは、関税撤廃に止まらず包括的なものとすべき

3.今後の課題
  • センシティブ品目問題もわが国全体の通商戦略の下で克服すべき
  • 両国経済界が日韓FTAの早期凍結に向け努力すべき


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