第28回北陸地方経済懇談会/11月8日
経団連と北陸経済連合会(北経連)は標記懇談会を富山市において開催した。経団連側からは今井会長、荒木・片田・槙原・香西・上島・西室の各副会長が出席し、約170名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。また、懇談会に先立ち、経団連側は株式会社タカギセイコーを訪問し、高精度のプラスチックス成形技術を開発している樹脂加工研究所等を視察した。
北陸地域の経済は、生産が一段と減少するほか雇用情勢も悪化するなど厳しい状況が続いている。政府には、景気回復に資する補正予算の編成など、大胆な景気対策を講じるよう要望していきたい。
北経連が基本姿勢とする「環日本海交流を先導するゲートウェイ」を実現するためには、北陸新幹線の早期整備や、東海北陸自動車道をはじめとする高規格道路網など、社会資本整備が不可欠である。
一方、北経連では、「21世紀に相応しい魅力ある北陸づくり」という観点から、北陸スーパー・テクノ・コンソーシアム(北陸STC)事業部を昨年12月に設立し、産業経済活性化に取り組むほか、「北陸環日本海経済交流促進協議会(北陸AJEC)」(1992年設置)のもと、北東アジアにおける産業・学術・人材等の交流を推進している。さらに、広域観光を推進すべく、北陸三県を横断する重要課題等に取り組んでいる。
北陸地域の経済情勢については、低調な個人消費に加え、一般機械や繊維産業等の輸出の減少、雇用の悪化など、厳しさを増している。北経連が会員企業に対して実施したアンケートによると、北陸企業の景況感および業績は総じて悪く、設備投資も減少傾向にある。小泉内閣の構造改革に関しては、75%の会員が改革の精神を評価する一方、北陸経済への深刻な影響を懸念する企業も75%おり、今後の動向が注視される。必要な経済対策としては、規制緩和の推進、雇用対策の強化、株価対策の推進等が挙げられている。
新たな経済社会システムの構築が求められる中、従来の画一的で中央集権的な行財政システムを見直し、地域の特性に応じた地域づくりを行うことが課題である。「地域のことは地域主体で考え、地域で実施する」べく、財政面において地方の収入を充実し、国からの財源依存度を引き下げるとともに、地方の事務事業を賄うに足りる財源の確保を図る必要がある。
北経連では、新しい技術の核を創出するため、北陸三県の産学官が連携すべきとの認識にたって、昨年12月、北経連内部に北陸STC事業部を設立した。北陸STC事業は、
21世紀の地域づくりは厳しい地域間競争の時代といわれており、北陸がこの競争に打ち勝つためには、日本海国土軸の拠点形成を促進し、地域内の連携・交流を強化する社会基盤の整備促進が不可欠である。
北陸新幹線については、本年5月、12年後の完成を目指して富山までの建設工事がフル規格により着工された。北陸が30年あまり要望してきた新幹線の建設は国家的プロジェクトであり、今後とも全線開通に向け関係機関に働きかけていきたい。
高規格幹線道路については、北陸・中部間の交流拡大に資する東海北陸自動車道が未だ全線整備されていない。2005年の中部国際空港開港や日本国際博覧会開催に間に合うよう運動を展開したい。
日本海沿岸の各地域が環日本海交流を展開しているが、北経連としては韓国との経済交流の強化および交流を担う人材の育成の二つを重点的に取り組んでいる。
具体的には、「北陸・韓国経済交流会議」の第1回会議を昨年7月に開催したのに続き、本年2月の第2回会議では、産業技術協力の具体化に向け、「ものづくり関連企業交流会」、「IT関連企業交流会」、「個別商談会」などを併せて開き、実をあげつつある。
交流を担う人材の育成にも力を入れており、環日本海交流を担う人的ネットワーク形成の面から、帰国後の留学生の活躍に期待している。また、外国人研修生の受け入れも今後の課題の一つと考えている。
新田八郎理事(日本海ガス社長)より「地球温暖化問題への対応として、企業が自主的に二酸化炭素排出抑制に取り組む中、北陸新幹線の整備は環境負荷の低減に大きく貢献する」との発言があった。
片田副会長より時代に相応しい機動的な会社法制の整備、西室副会長より今年度の社会保障改革の最重要課題である医療制度改革について、経団連の取組みを紹介した。また、荒木副会長より温暖化対策など環境・エネルギー問題、さらに、香西副会長より地域産業集積の実例を交えながら地方主権の実現を通じた地域の自立的発展について説明した後、上島副会長より韓国との自由貿易協定など経済交流の拡充、槙原副会長よりWTO新ラウンド交渉に向けた経団連の取組みについて発言した。
最後に、今井会長より、北陸におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として構造改革の推進に向け積極的に取り組んでいくとの総括があった。