経団連くりっぷ No.160 (2001年12月13日)

日本ブラジル経済委員会(委員長 室伏 稔氏)/11月6日

直接投資誘致で輸出拡大を目指すブラジル

−アマラル ブラジル開発商工大臣と懇談


8月の大臣就任後、初の外遊先として日本を訪れたブラジルのアマラル開発商工大臣を迎え、最近の堅調なブラジル経済情勢や、同国の輸出拡大へ向けた取組みについて説明をきいた。同大臣はブラジルが、メルコスール(南米南部共同市場)とEUのFTA交渉や、FTAA(米州自由貿易地域)発足に向けた交渉を積極的に推進していることを強調するとともに、日本との自由貿易協定締結交渉の開始に意欲を示した。

○ アマラル大臣発言要旨

  1. 最近のブラジルの経済情勢について
  2. ブラジルは当初、本年の経済成長を年率4.5%以上と見込んでいた。しかし米国の同時多発テロの影響による世界的な景気低迷により、目標を下回る可能性が高くなっているものの、世界平均を上回る成長を遂げるものと予測している。財政については収支目標を達成しつつあり、インフレ率は低位安定している。貿易収支の改善も著しく、2002年には50億ドルの黒字計上が期待されるなど、経済ファンダメンタルズは堅調である。
    ブラジルは発電量の90%以上を水力に依存している。今年は雨が少なく、電力危機に直面している。今後は天然ガスを利用する火力発電所の建設を促進し、電力の構造的な問題の解決を図りたいと考えている。なお、国営企業の民営化は製造業でほぼ完了し、多くの成果を得た。今後はサービスやユーティリティー部門の民営化を予定している。

  3. 外国からの対伯直接投資について
  4. 外資参入を促すために通信、金属、鉱業、石油・ガス、銀行などの分野で規制緩和を行った結果、過去3年間で940億ドルにのぼる外国企業の直接投資が行われた。しかし、日本の対伯投資は少なく外資に占める日本の投資のシェアは1.16%にすぎず、日本のポテンシャルに比して低い水準にとどまっている。
    ブラジルの最優先課題は、輸出拡大である。このためWTO、メルコスールやFTAA交渉を通じた貿易障壁の撤廃、税負担軽減とインフラ改善に取り組んでいる。エレクトロニクスなど急速に発展した産業ほど輸入依存度が高いことから、裾野産業の育成に注力したい。今後、投資環境をさらに整備し、ブラジルを輸出基地にするために、外国からの直接投資誘致を引き続き積極的に行っていきたい。

  5. 対日関係について
  6. 1970年代に黄金期を迎えた日伯経済関係は、その後一時低迷したが、昨今、新しい分野での関係強化が可能となっている。例えばセペチバ港開発などのインフラ整備、電力などのエネルギー、原油・天然ガス開発などの分野で多くの投資機会がある。また、対日貿易についてはソフトウェア、自動車部品、アグロビジネスなどの分野でブラジル製品の輸出が期待できる。
    ブラジルは現在、メルコスールとEUのFTA交渉を行っており、近い将来、米国とのFTA交渉も開始する予定である。日本とも、自由貿易協定の締結を検討すべき時にきている。


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