金融制度委員会資本市場部会(部会長 福間年勝氏)/12月11日
資本市場部会では、企業の資金調達の円滑化や個人金融資産活用の観点から、証券取引等監視委員会を中心とする市場監視体制のあり方について検討している。同部会では東京大学大学院法学研究科の宇賀克也教授を招き、行政組織法の観点から見た市場監視体制のあり方の課題について説明をきいた。
現在、証券取引等監視委員会は、国家行政組織法第8条に基づいて、内閣府の外局である金融庁に置かれる付属機関として位置付けられている。しかし、その源流は、GHQの指導の下に米国の独立規制委員会をモデルに自らの名で対外的な意思決定を行う行政委員会(3条委員会)としてつくられた「証券取引委員会」にある。その狙いはわが国の行政を民主化し、政治的中立性を重視する観点から、内閣から独立した組織を編成することであった。
ところが占領終了後、国においては公正取引委員会等を除き、行政委員会はほとんど廃止、改組されてしまった。その理由として
証券取引委員会の廃止後、証券行政については大蔵省証券局が担ってきたが、証券不祥事をきっかけに「コーチとアンパイアの分離」が求められ、証券取引等監視委員会が設けられた。しかしこの委員会は勧告・告発権限のみを有し、自ら処分を行う権限のない8条委員会となった。
委員長および委員は、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命し、党派的な偏りを抑制し、在任中は政治的活動を禁止される。ちなみに国家公安委員会の委員長は閣僚であるが、政治的中立性を維持するために表決権を持たない。罷免権は内閣総理大臣が持つが、委員会が認めた場合でなければ罷免できない。この身分保障により職権行使の独立性を確保している。また合議制をとることにより、透明性を高めている。
日本版SEC構想として、証券取引等監視委員会を3条委員会に移行することが検討されている。その意義と評価は金融庁の所掌事務をどう捉えるかで変わる。現在の金融庁設置法においては金融庁の所掌事務として金融機関の保護育成は明示されていない。金融庁に金融機関の保護育成機能があるとの解釈をすれば、再びコーチがアンパイアとしての市場監視機能を兼ねているとの批判を受けることになる。例えば8条委員会は原則として自ら行政処分はできないため、建議・勧告を行った際に処分権限を持つ金融庁長官が従わないなど、金融庁とスタンスがずれることとなれば機能しない。もっとも勧告内容は公表されるため、これに従わないことは政治的には困難であろう。
金融庁と委員会を分離するかどうかで決定的意味をもつのは金融庁職員の再就職のあり方である。退職後、金融機関にお世話になるということでは厳正な規制を課することは困難である。
また、現在の仕組みを変えないとしても、現在の証券取引等監視委員会の陣容は、米国のSECと比べて見劣りがする。規制のあり方が事前規制から事後監視型へと重点を移す中で、それにふさわしいものにしていく必要がある。
米国SECは日本の証券取引等監視委員会にはない取締役としての活動の禁止を求める権限を有するほか、日本の証券取引等監視委員会が持っていない