月刊Keidanren 2001年3月号
月刊Keidanren対談

五つの改革で日本を変える

−ビジネス経験を政治に生かす−


今井 敬 近藤たけし
経団連会長 経団連特別顧問
(元 伊藤忠商事常務取締役
 ・政治経済研究所長)

○ 経済界の声を政治の世界に

今井 経済の主役は企業ですが、政治には、われわれが自由に活力を発揮できるための基盤整備が求められます。政治との対話によって既に多くの政策が実現されたわけですが、経済界から見てはがゆく感じられることもあります。その理由として、ビジネスの経験を持ち、経済の実態を理解している政治家が少ないことがあります。
そこで、三年前に参議院議員になられた加納時男さんに続き、ぜひ有力な経済人に政治に参加していただきたいと考えていました。近藤たけしさんは、長い実業のご経験とともにエコノミストとしての先見性もお持ちですし、何よりアメリカとの人脈が豊富です。近藤さんを通じて、経済界の考え方を直接政治の世界に伝えられれば、日本を活性化できると心から期待しています。

○ 急いで実行すべき五つの改革

近藤 今、日本全体を支配している閉塞感を打破するためには、経済を変えなくてはならず、そのために政治がより早く動くことが必要です。今の日本の政治には世界観と歴史観、そしてスピード感が欠けています。この三つを早く埋めることが、私の使命だと考えています。日本には3%以上の経済成長を実現できる潜在力があり、必要な構造改革をきちんと実行すれば、明るい展望が開けるというメッセージを、政治が国民に対して明確に伝え、着実に実行することが重要です。

今井 選択と集中の思い切った経営ができるように、法制や税制をグローバル・スタンダートに合わせていかなくてはなりません。世界が急速に動いている中、政治にスピードがないと、日本が取り残されてしまいます。

近藤 今すぐ実行すべきことは五つあります。第一に、税制改革です、直接金融の時代にあわせて、貯蓄優遇から投資優遇の税制に変えていかなくてはいけません。たとえばキャピタルゲイン税率を引き下げ、株式市場へ資金が入るようにすることが重要です。家計部門も、住宅投資等将来の生活に備えた投資を奨励する必要があります。第二は、規制改革です。企業が経営しやすい環境と、生活者がより利便性を感じる社会を築く視点から、政治の責任で思い切った規制改革を進める必要があります。流通、通信等国内の規制による高コスト構造をなくさねば、日本企業はグローバル市場で競争できません。第三は、公共事業改革です。公共事業の重点をIT等、より経済効率が高く、生活者の利便性を配慮したものにシフトしていくべきです、第四は、行政改革です。中央政府の行政改革に加速をつけるとともに、市町村の合併も含めた地方の行政改革を進める必要があります。また中央から地方に財源と権限を思い切って移し、真の意味での地方自治を確立する必要があります。第五は、社会保障改革です。企業年金の拡充とポータビリティの拡大や、社会保障の支え手を増やしていくことが大切です。国民、特に若い人に持続可能な社会保障制度のビジョンを示し、将来への不安を払拭する必要があります。

○ 自民党を中から変える

今井 閉塞感を打破して経済を活性化するためには、今言われた五つの改革がいずれも重要であり、全面的に賛成です。
自民党は政権を担っていける人材とノウハウを揃えた政党ですが、現状維持派が多く、改革に向かないという空気もあります。近藤さんには、自民党を中から変えるという気持ちで、ぜひ政治を活性化していただきたいと期待しています。

近藤 全力を尽くしてまいります。ご支援をよろしくお願いいたします。

(2月5日 経団連会館にて)

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