三田 勝茂 経団連副会長
こうした改革の理由にはいろいろあるが、その第1は日本の経済社会の成熟化である。
生活水準が上昇すれば、「企業」や「お上」から押しつけられたものよりも、自律性や多様性のある価値観が強まってくる。消費のことも地域のことも、それを買う人やそこに住む人が一番分かっているのである。
われわれ企業人がCS(消費者満足)を重視するのはそれゆえであり、地方分権もCSに土台を置くべきなのである。
第2の理由は、わが国が国内的にも国際的にも大きな転換期にあることである。
国内的には“How to”の時代から“What to”の時代となった。
企業は「横並び戦略」ではなく「これこそ自社製品」といえる自主性あるものを生み出さねばならない。
国際的には、ボスニアで活躍する明石国連事務総長特別代表の、「冷戦後の社会では違いを尊重しなければやっていけません。共産社会と自由主義陣営
という2つの色分け時代が終わり、多彩な世界になったのですから」という言葉が、けだし至言である。
そして「違いの尊重」とは、「違いの自覚」と「違いへの寛容」から成り立つ。それは国家間でも、人種・民族間でも重要なことはいうまでもなく、ひとつの国をとってみれば、その国の地域と地域の間でも同じである。
結局、企業の自主性と同様、地方分権は、国の中で多彩な地方像の可能性を高めるものとして重要である。明石氏の言葉は、その意味で時代変化の本質を洞察している。わが国は地方分権による「内なる多彩化」、国際化による「外なる多彩化」に適応すべき段階を迎えているといえる。
それにしては地方分権への総論賛成・各論反対は困ったものだと思う。 こういう情況を早く打破して、地方分権に積極的に取り組んでもらいたいものである。 (みた かつしげ)